
中級8
近現代物理学・時空の革命
核融合反応とは、軽い原子核どうしが合体してより重い原子核になり、莫大なエネルギーを放出する反応です。軽い原子核が合体し・質量の一部がエネルギーに変わる仕組みは太陽のエネルギー源でもあります。この資料では、原理・太陽での核融合・地上での実現方法・課題・未来の可能性を順に見ていきます。
代表的な核融合反応(D-T反応)では、重水素と三重水素が超高温で近づいて核力で結合し、ヘリウムと中性子が生まれ、エネルギーが放出されます。燃料は軽い原子核で、生成物はヘリウムと中性子です。1億度以上の高温で原子核が十分に近づくことで反応が起こり、質量の一部がエネルギーに変換されます。
核融合では反応の前後で質量がわずかに減り、その「消えた質量」がエネルギーに変わります。これを質量欠損(Δm)といい、アインシュタインの式 E=mc² によって莫大なエネルギーに変換されます。光速(c)は約3×10⁸ m/s で、その2乗が掛かるため、小さな質量差でも非常に大きなエネルギーが生まれます。
太陽など恒星は、巨大な重力・圧力・温度によって核融合を自然に持続させています。太陽の中心部では水素がヘリウムへと変換され(陽子4個→ヘリウム+エネルギー)、中心温度は数千万度以上に達します。巨大な重力が水素を中心部に集め続け、重力とエネルギー放出のバランスが恒星の輝きを長期間維持しています。
核融合を持続的に起こすには、超高温(約1億度)・十分な密度・充分な閉じ込め時間という3条件を同時に満たす必要があります。高温が必要なのは、原子核が電気的な反発力(クーロン力)を超えて近づくためです。プラズマの密度・温度・時間の積が一定値以上になると核融合が持続できるというローソン条件が基準となっています。
磁場閉じ込め方式は、超高温プラズマを強力な磁場でドーナツ状に閉じ込めて核融合反応を起こす方式です。代表例のトカマク型では、トロイダル磁場コイル・ソレノイドコイル・ポロイダル磁場コイルの組み合わせでプラズマを壁に触れさせずに安定して閉じ込めます。長時間運転に向き将来の発電炉に適した方式として、現在の核融合研究の主力となっています。
慣性閉じ込め方式は、強力なレーザーを燃料球に照射して一瞬で圧縮・加熱して核融合反応を起こす方式です。レーザーが燃料球の表面を加熱・蒸発させ、反作用で内部が急圧縮されて中心部が超高温・超高圧になりエネルギーが放出されます。反応は約1ナノ秒程度で完了し、短時間で大きなエネルギーを取り出します。
核融合は燃料の入手性が高く、安全性に優れ、環境への影響を抑えやすいエネルギーです。燃料の重水素は海水から豊富に得られ、三重水素はリチウムから合成可能です。核融合は連鎖反応ではないため暴走事故が起こりにくく、CO₂排出が少なく、長寿命の高レベル廃棄物も比較的少ないという特徴があります。
核融合の実用化には複数の技術的ハードルがあります。まず高温プラズマを長期間安定して閉じ込めるプラズマ制御・高温と強い熱負荷に耐えられる耐熱材料の開発が必要です。また中性子による材料損傷への対策・燃料のトリチウムを増殖・確保・管理・回収する技術の確立・実用的なコストでの正味エネルギー利得の実現が目指すゴールです。
今回は、核融合反応についてお伝えしました。軽い原子核が融合してエネルギーを放出する核融合は、超高温・高圧のプラズマ状態で起こり、磁場や慣性閉じ込めでの制御が研究されています。長時間運転・材料耐久性・コストなどの課題はありますが、豊富な燃料・本質的な安全性・少ないCO₂排出を持つ核融合は、次世代のクリーンエネルギーとして人類の未来を照らす希望です。