ダークマター(暗黒物質)は、光を出したり、吸収したり、反射したりしません。そのため、通常の望遠鏡では見ることができません。特徴:①光とほとんど相互作用しない ②重力で銀河を束ねる ③宇宙全体の質量の大部分を占める(全質量の約85%を占めると考えられている) ④正体はまだ未解明。ダークマターハロー:銀河を包む巨大な見えない質量の雲。ダークマターがなければ星やガスは重力でまとまらず、はぐれやすい。ダークマターは「見えないが重い」宇宙の骨組みである。
見える物質だけでは説明できない「速すぎる回転」。銀河の回転曲線(例:渦巻銀河)では、外側の星はほぼ同じ速さで回転しており、見える物質だけの予想(外側ほど遅くなるはず)と一致しない。なぜ証拠になるか:①外側ほど星は遅くなるはず ②しかし観測では外側が速い ③追加の重力源が必要 ④その候補がダークマター。重力が足りない=質量が足りない。銀河の回転曲線は、見えない質量の存在を強く示している。
光の曲がり方が、見えない質量の分布を教えてくれる。重力レンズとは:質量によって時空がゆがみ、光が曲げられる現象。これを使って見えない質量を調べる。ここが重要:①質量が大きいほど光は曲がる ②曲がり方から総質量を推定できる ③見える物質だけでは足りない ④銀河団ではダークマターが広く分布している。弾丸銀河団の例:見えている高温ガス(通常物質)と、重力から推定される質量の分布がずれている。重力レンズは、見えない質量を「地図化」する方法である。
正体はまだ不明だが、さまざまな候補と実験がある。主な候補:①WIMP(弱く相互作用する重い粒子) ②アクシオン ③ニュートリノ(ただし主成分にはなりにくい) ④修正重力理論(対立仮説)。3つの探索法:①直接検出(地下実験で粒子の衝突を探す) ②間接検出(崩壊・対消滅の信号を探す) ③加速器実験(高エネルギー衝突で生成を探す)。まだ決定打はない:いずれの方法でも確定的な検出はされていない。ダークマター研究は「何でできているか」を探る最前線である。
宇宙膨張を加速させる「反重力のような効果」。ダークエネルギーとは:宇宙の膨張が後期に加速している原因となっている、未知の要因につけられた名前。特徴:①空間そのものに広がっているとされる ②重力に逆らうような効果をもつ ③宇宙の大部分(約68%)を占める ④正体はまだ不明。たとえ話:風船の表面が広がるように、銀河同士の距離が広がっている(銀河そのものが大きくなるわけではない)。ダークマターは引き寄せる VS ダークエネルギーは引き離す。宇宙定数Λとも関連する。
遠方超新星と宇宙背景放射が「加速膨張」を示した。Ia型超新星の観測:遠いほど暗い(予想より暗い)=遠方の宇宙は加速して広がっている。Ia型超新星は明るさのばらつきが小さいため「標準光源」として使える。主な観測証拠:①Ia型超新星(距離と加速膨張を示す) ②宇宙マイクロ波背景放射(CMB)(宇宙の組成と成分を制約) ③バリオン音響振動(BAO)(膨張史を測るものさし) ④大規模構造の観測(宇宙進化モデルと整合)。複数の独立な観測が、宇宙の加速膨張を支持している。
どちらも見えないが、宇宙での役割は大きく異なる。ダークマター(約27%):銀河の回転・重力レンズ効果・大規模構造の観測でわかる。重力を通して物質を引きつけ、銀河の大規模構造をつくる。銀河や銀河団のハローに集中し分布する。正体となる粒子はまだ未解明。ダークエネルギー(約68%):Ia型超新星の観測・宇宙の加速膨張の証拠でわかる。宇宙の膨張を加速させ未来の宇宙の運命を決める。宇宙全体にほぼ一様に分布する。正体は何か、時間とともに変化するのか不明。ダークマターは「構造形成」、ダークエネルギーは「宇宙の加速膨張」に関わる。
見えない成分が、銀河形成と宇宙の未来を左右する。宇宙の歴史:ビッグバン→宇宙背景放射→銀河形成→現在→未来。ダークマターの役割(初期〜中期):構造形成の「タネ」となり、重力で物質を引き寄せる。銀河や銀河団をつくる骨組み(重力の足場)を提供する。ダークエネルギーの役割(後期):宇宙の後半で支配的になり、宇宙の膨張を加速させる。時間とともにその影響は強まる。なぜ重要か:①銀河や銀河団の形成を理解できる ②宇宙の成り立ちを説明できる ③宇宙の将来像を予測できる ④基礎物理学の新発見につながる。見えない成分を理解することは、宇宙の過去と未来を理解することにつながる。
5つの要点:①通常の物質は宇宙のごく一部 ②ダークマターは重力で存在が示される ③ダークエネルギーは加速膨張と関係する ④どちらも正体はまだ確定していない ⑤これらの解明は現代物理学の大きな課題。こう考えるとわかりやすい:ダークマター=宇宙の骨組み、ダークエネルギー=宇宙を押し広げる効果。見えない宇宙を理解することは、宇宙そのものの正体に近づくことだ。