整った状態は少なく散らばった状態は多い。部屋は自然に散らかりやすく勝手に片づきにくい。インクが水に広がる例でも同じ現象が起きる。自然は「可能性の多い状態」へ進みやすく、エントロピーとはその散らばりやすさを表す量。
熱は高温から低温へ流れ、そのときエネルギーは「使いにくい形」へ広がる。エントロピーはその広がり方を表す量。熱力学の定義では、エネルギーの拡散・不可逆性を示す指標となる。
マクロ状態は温度・体積・圧力のような観測できる特徴で、ミクロ状態は粒子1つ1つの位置や運動。同じマクロ状態に対応するミクロ状態の数は天文学的に多い。エントロピーは「何通りあるか(場合の数)」と深く関係し、可能なミクロ状態が多いほどエントロピーは高い。
S = k log W(S:エントロピー、k:ボルツマン定数、W:実現可能なミクロ状態の数)。Wが大きいほど実現の仕方が多く、エントロピーも大きくなる。「乱雑さ」を数と結びつけた重要な式で、エントロピーをマクロな乱雑さをミクロな可能性から定量的に表す指標とした。
孤立系では、エントロピーは減少せず増大する方向へ進む。これが熱力学第二法則の中心。自然現象には「向き」があり、割れたコップが自然に元に戻らないように、元に戻せない変化を不可逆過程と呼ぶ。
「散らばった状態」のほうが圧倒的に場合の数が多く、そのため自然にそこへ移りやすい。これは法則というより確率の偏りとして理解できる。秩序だった状態は「珍しい」ため、放っておくと自然に無秩序(エントロピーが大きい状態)へ向かう。
クロード・シャノンが提案した「シャノンエントロピー」は、情報理論における「どれだけ予測しにくいか」を表す指標。選択肢が多く偏りが少ないほどエントロピーは高い。データ圧縮・通信設計・機械学習の不確実性の扱いなど幅広く応用されている。
エントロピー増大は「時間が一方向に進む」感覚と結びつく。宇宙も初期は低エントロピーだったと考えられる。生命は局所的に秩序を作るが全体ではエントロピーを増やす。局所的な秩序と全体の増大は両立し、身近な現象から宇宙の進化、生命の営みまでをつなぐ鍵となる。
①エントロピーは状態の広がり・起こりやすさの尺度。②散らばった状態ほどエントロピーは高い。③熱力学第二法則では全体として増大する。④情報理論では「不確実さ」として現れる。⑤自然・時間・宇宙を理解する基礎概念。エントロピーはミクロな世界から宇宙の進化までを統一的に理解するための鍵となる概念。