ヌクレオチドがつくる二重らせんと塩基対のしくみ。DNAはリン酸・デオキシリボース・塩基からなるヌクレオチドが連なってできている。4種類の塩基:アデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)。塩基対の規則:AはTと結合(2本の水素結合)、GはCと結合(3本の水素結合)。二重らせん構造:2本のヌクレオチド鎖が塩基対を内側にして互いに逆向きに巻きついた構造。逆向合成(アンチパラレル):一方の鎖は5'→3'方向、もう一方は3'→5'方向。DNAは「塩基配列」という形で遺伝情報を保存する分子である。
DNAはどのように整理され、生命の情報を担っているのか。構造の階層:細胞と核(細胞は生命の基本単位)、染色体(DNAはヒストンに巻きついてクロマチンとなり、さらに凝縮して染色体を形成。ヒトは23対)、遺伝子(DNA上の特定の領域で、mRNAやタンパク質の設計情報を持つ機能単位)、ゲノム(生物が持つすべてのDNAの総称。遺伝子と遺伝子の間の領域も含まれる)。遺伝子はDNA上の機能単位であり、ゲノムはその全体像である。
細胞分裂の前に、遺伝情報はどのように正確にコピーされるのか。複製フォークのしくみ:ヘリカーゼが二本鎖DNAをほどき、リーディング鎖(先行鎖)は5'→3'方向に連続的に合成され、ラギング鎖(遅延鎖)は3'→5'方向に岡崎フラグメントとして不連続に合成される。リガーゼがフラグメント同士をつなぐ。半保存的複製:それぞれの娘DNAは、もとのDNAの1本と新しく合成された1本からなる。複製の流れ:①ヘリカーゼで二本鎖がほどける、②相補的な塩基が並ぶ、③DNAポリメラーゼが5'→3'方向に鎖を伸長する、④2本の娘DNAができる。DNA複製は、塩基の相補性と酵素の働きによって高精度に進む。
DNAの情報はどのようにRNAへ写し取られるのか。RNAポリメラーゼがプロモーターに結合し、テンプレート鎖を5'→3'方向に読みながらRNAを合成する。塩基対応はA-U、G-C(RNAではチミンの代わりにウラシルを使用)。真核生物におけるmRNAのプロセシング:①5'キャップ付加(mRNAの安定化・翻訳促進)、②スプライシング(イントロンを除去しエキソンをつなぐ)、③ポリA付加(3'端にAAAAAAAAを付加し、安定性・輸送・翻訳効率を調節)。成熟mRNAが核から細胞質へ運ばれる。転写は、DNAの情報をRNAという「使いやすい形」へ変換する過程である。
mRNAの情報はどのようにアミノ酸配列へ変換されるのか。コドンとはmRNA上3つの塩基の並び(トリプレット)で、1つのコドンが1つのアミノ酸を指定する。翻訳の流れ:①mRNAがリボソームに結合し開始コドン(AUG)を認識、②tRNAがアンチコドンでコドンを認識し対応するアミノ酸を運んでくる、③リボソーム内でアミノ酸が次々と結合される、④終止コドンに達するとポリペプチド鎖が放出されタンパク質が完成する。タンパク質は構造・触媒・シグナル・速度制御など多様な機能を担う。翻訳によって、塩基配列の情報は生命機能を担うタンパク質へと変わる。
同じDNAを持ちながら、細胞ごとに働きが違う理由。調節のしくみ:①転写因子(特定のDNA配列・調節領域に結合し、転写の開始を助けたり抑えたりするタンパク質)、②エンハンサー/サイレンサー(離れた場所にあり、ループ構造でプロモーターと作用して転写を促進または抑制)、③クロマチン構造(DNAがヒストンに巻きついた構造。ほどけていると転写しやすく、巻いているとアクセスしにくい)、④エピジェネティクス(DNAメチル化やヒストン修飾などにより、DNA配列を変えずに遺伝子発現を長期的に調節するしくみ)。遺伝子発現の調節は、同じ設計図から多様な細胞機能を生み出す鍵である。
遺伝情報の変化はどのように起こり、どう修復されるのか。突然変異の主な種類:置換(1つの塩基が別の塩基に置き換わる)、挿入(1つまたは複数の塩基が追加される)、欠失(塩基の欠失)、フレームシフト変異(挿入・欠失によりコドンの読み枠がずれ、以後のアミノ酸配列が大きく変わる)。変化の主な原因:複製エラー・紫外線(UV)・化学物質・放射線。DNA修復機構:細胞にはDNAの傷を見つけて修復する酵素があり、ヌクレオチド除去修復(NER)などが働く。突然変異は進化の材料になるが、修復の失敗は病気の原因になる。
DNAを読む・増やす・編集する技術は社会でどう使われるのか。代表的な技術:①PCR(特定のDNA領域を増幅し、実験室から現場まで使える)、②シーケンシング(DNAの塩基配列を決定。次世代シーケンシング(NGS)により大量のDNA情報を短時間に分析可能)、③ゲル電気泳動(DNA断片を電気力で大きさにより分離する)、④CRISPR遺伝子編集(Cas9などをナイフとして特定の遺伝子を正確に切り取り・編集する技術)。応用分野:医療・診断(遺伝子検査・がん診断・感染症同定)、法医学・個体識別(犯人特定・親子鑑定)、農業・バイオテクノロジー(品種改良・害虫抵抗性)、基礎研究(生命現象の解明・疾患の仕組みの理解)。分子生物学の技術は、生命の理解を深めるだけでなく医療や産業も変えている。
分子生物学とDNAを10枚で振り返る。5つの要点:①DNAは遺伝情報を保存する、②遺伝子はRNAやタンパク質の設計情報を担う、③複製・転写・翻訳が情報の流れをつくる、④発現調節や突然変異が生命の多様性と変化を生む、⑤分子生物学は医療・研究・産業を支える。こう考えるとわかりやすい:DNAはレシピ本/設計図/コード(情報の本体を保存)、RNAは作業メモ/コピー/メッセージ(情報を運び伝える)、タンパク質は働く人/道具/機械(細胞の中で仕事をする)。分子生物学は、生命のしくみを理解し、未来の医療と技術を切り開く土台である。