
初級5
進化のしくみから生物多様性を解き明かす
なぜ生物は多様化したのか
編集部
細胞を持たず単独では増殖もできないウイルスは、果たして「生物」なのでしょうか。DNA/RNAを持ち進化する一方で代謝も自立性もない——この問いを通じて、現代生物学が「生命とは何か」という根本的な謎にどう向き合っているかをわかりやすく解説します。このスライドでは、まず「生物」とは何か・ウイルスの基本構造・ウイルスが「生物らしい」といえる点・ウイルスが「生物ではない」とされる点など、10枚のスライドでわかりやすく解説していきます。
生物に見られる共通の特徴として、いくつかの点が挙げられます。まず細胞からできていること、次に代謝を行うこと、自己増殖できること、遺伝情報を持つこと、進化すること、そして恒常性を保つことの6点です。ウイルスは細胞を持たず独自の代謝や恒常性の維持もできませんが、遺伝情報と進化の能力は持っています。
ウイルスは核酸(DNAまたはRNA)・カプシド(たんぱく質の殻)・エンベロープ(一部のウイルスのみが持つ脂質膜)から構成される非常に小さな存在です。大きさは20〜200nm程度で、一般的な細胞(10〜30μm)の数十〜数千分の一です。細胞を持たず、宿主細胞内でのみ増殖することができます。
ウイルスが生物らしいとされる点がいくつかあります。まず遺伝情報(DNA/RNA)を持つこと、突然変異し進化すること、自然選択を受けること、そして宿主内では増殖できることが挙げられます。インフルエンザや新型コロナウイルスが変異し続けることは、ウイルスが進化する典型例です。進化する遺伝的存在である点は、生物的だと考えられています。
一方、ウイルスが生物ではないとされる根拠もあります。細胞構造を持たず、自力で代謝できず、エネルギーをつくれず、宿主なしでは自己増殖できないことがその理由です。宿主の細胞の外ではウイルス粒子は不活性な状態にあり、単独では何もできず増えることもできません。単独では「生命活動」をほとんど行えないため、無生物に近いとみなされています。
ウイルスの増殖は、付着・侵入・遺伝子の複製・部品の合成・組み立て・放出という6段階で進みます。ウイルス自身には工場がないため、宿主細胞のリボソームや酵素など細胞の仕組みをそのまま利用して自らのコピーを作ります。「自分で増える」のではなく「借りて増える」存在だということが大きな特徴です。
生物と無生物の境界をさらに曖昧にする存在もあります。一部の遺伝子が多く細胞生物に近く見える「巨大ウイルス」、たんぱく質の殻を持たないRNA性病原体の「ウイロイド」、そして核酸を持たない異常なたんぱく質の「プリオン」などがその例です。生命らしさは連続的であり、白黒はっきりと分けにくいことが現代生物学の見方です。
研究者の間でも見方は分かれています。生物とみなす立場では、遺伝情報を持つ・進化する・宿主内では増殖するという点が根拠とされます。一方、生物ではないとする立場では、細胞がない・代謝がない・単独では活動できないことが根拠とされます。現在は「生物と無生物の中間的存在」という見方が一般的となっています。
遺伝と進化の面では生物的ですが、代謝と自立性の面では非生物的です。そのため、ウイルスを完全な二択で捉えることは難しいといえます。ウイルスは「生きているかどうか」を問い直させる存在であり、生命の定義そのものを再考させます。
今回はウイルスが生物かどうかについてお伝えしました。ウイルスはDNAまたはRNAを持ちますが、細胞を持たず代謝もしません。宿主に依存して増殖し、進化するため生物らしさもある一方で、現在は「境界的存在」と考えるのが妥当です。「生物とは何か」を考えること自体が生命科学の面白さであることを覚えておいてください。