
初級11
産業史・製造業
自動車産業の起こりと変化
編集部
バリューストリームマッピング(VSM)は、製品やサービスが受注から納品されるまでの流れを、情報とモノの両面から見える化するツールです。「情報の流れ」「モノの流れ」「ムダを見つける」「全体最適」「改善」がキーワードとなります。一枚の図で工程全体を俯瞰し、価値を生まない活動(ムダ)を特定することができます。
VSMは部分最適ではなく、全体の流れから価値を高える考え方です。VSM導入前は長い待ち時間・部門間の壁がありますが、導入後はリードタイム短縮・ボトルネックの特定が可能になります。個々の工程を改善するだけでは見えない「流れ全体の問題」を明らかにすることができます。
VSMで使う基本要素は6つあります。工程(四角の箱)、在庫(三角形)、情報の流れ(矢印)、モノの流れ(太い矢印)、データボックス(各工程の数値)、タイムライン(下部の時間バー)です。データボックスにはC/T(サイクルタイム)、C/O(切替時間)、仕掛かり量などの指標を記入します。
現状マップは工程だけでなく、待ち時間・在庫・手戻り・情報伝達も観察対象にします。たとえば生産管理システムから受注・作業・検査・出荷・顧客という流れで全体のリードタイム約2.5日を把握するといった形です。実際に現場を歩き、データを収集して「ありのまま」を描くことが重要です。
現状マップは5つのステップで作成します。まず対象範囲を決め(どこからどこまでを描くか)、次に現場観察で実際の流れをウォークスルーします。続いて工程の流れを書き、情報とモノの流れを書き、最後にタイムラインをまとめます。現場で実際に観察して描くことが最も重要なポイントです。
具体例として受注→調達→組立→検査→出荷→顧客という流れを見てみましょう。各工程のデータボックスには、調達(C/T:10分、C/O:1時間、仕掛かり15個)、組立(C/T:55分、C/O:30分、仕掛かり2個)、検査(C/T:10分、C/O:15分、仕掛かり3個)などを記録します。タイムライン合計で約2.5日以上のリードタイムとなり、調達の8時間待ちが問題点として浮かび上がります。VSMは工程全体を1枚にまとめることで見えない「待ち時間」を見える化し、改善の優先順位を明確にします。
VSMは価値を生む作業と価値を生まないムダを区別して見える化します。5種類のムダとして、次の作業や情報を待っている「待ち」、必要以上の在庫や仕掛かりが流れを止める「在庫・仕掛かり」、品質問題や仕様の不明確さで手直しが発生する「手戻り」、情報や作業の引き継ぎが多すぎる「過剰な引き継ぎ」、処理能力が不足している工程が全体の流れを遅らせる「ボトルネック」があります。目的は「どの部署の問題か」を責めることではなく、「どこで流れが失われているか」を見つけることです。
未来状態マップは、主なムダや遅れを取り除き、需要・モノの流れ・情報のつながりを強化した「次に目指す改善後の状態」を描くものです。完璧な理想ではなく、実現可能な次のステップを示します。改善のアイデアとして、仕掛かりを減らす(小さなロットで流す)、情報伝達を早くする(リアルタイム共有)、工程を平準化する(需要の偏りを減らす)、品質問題を前工程で止める(不良を作らない仕組み)などがあります。具体的なアクション(誰が・いつまでに・何をするか)まで落とし込むことが大切です。
流れの良し悪しを数字で把握するために5つの指標が使われます。リードタイムは最初から最後の工程まで全体でかかる時間で、加工時間は実際に製品に価値を加えている時間です。仕掛かり量・WIPは工程間に溜まっている仕事の数量で、タクトタイムは需要を生産能力で割った時間(顧客が何分に1個求めているかの基準)です。また不良・手戻り率は不良や手直しが発生した比率を示します。リードタイムと加工時間の比率を見ることで、全体の「ムダの割合」が数字で把握できます。
今回はバリューストリームマッピング(VSM)についてお伝えしました。VSMの5ステップとして、まず全体を把握し(工程のつながりを整理)、現状を観察し(ありのままを描く)、ムダを発見し(待ち・在庫・手戻り・引き継ぎの停滞)、未来状態を描き(ムダを取り除いた改善後の流れ)、そして改善を実行します(小さく始めて全体に広げる)。VSMは図を描くだけのツールではなく、チームで対話し理解を深め改善につなげるコミュニケーションツールです。本質は顧客の視点で全体の流れを見て、継続的に改善していくことにあります。