
中級7
生産管理・経営哲学
トヨタ生産方式(TPS)とリーン生産
編集部
19世紀末の誕生からフォードの大量生産革命、トヨタのリーン生産方式の確立、そして電気自動車の時代へ——自動車産業150年の変革史を解説します。ものづくりの進化が社会・経済をいかに変えてきたかを、具体的な事例とともに学んでいきましょう。このスライドでは、自動車産業の起こり・フォードの大量生産革命・大量生産が社会を変えた・トヨタ生産方式の誕生など、10枚でわかりやすく解説していきます。
19世紀末、蒸気機関・内燃エンジン・道路整備が重なり、新たな産業が生まれました。手工業による少量生産からスタートし、熟練職人が一台ずつ組み立てる時代でした。高価で富裕層しか手が届かなかった自動車は、やがて大量生産の登場によって劇的に変わっていきます。
ヘンリー・フォードは標準化と流れ作業(コンベア生産)を導入し、T型フォードを大衆向け商品に変えました。1908年の価格は約850ドルでしたが、1925年には約260ドルにまで下落しました。生産性を劇的に高めるとともに、労働者自身が自動車を買えるほど賃金も引き上げました。
自動車の普及は社会を大きく変えました。移動の自由が広がり、石油・鉄鋼の需要が拡大しました。郊外地・道路・ガソリンスタンドが整備され、物流・観光産業が発展しました。一方で交通事故や大気汚染・騒音といった課題も生じ、規制や都市計画の見直しが求められるようになりました。
戦後日本のトヨタは、米国式大量生産をそのまま真似せず、多品種少量生産に対応する独自方式を開発しました。「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」つくるという考え方のもと、ムダをなくし品質を工程で作り込む仕組みを築き上げました。
二本柱はジャストインタイム(JIT)と自働化(にんべんのついた自動化)です。かんばん方式で工程間の部品流れを制御し、カイゼン活動で継続的に改善を続けます。生産量を平準化し、異常が発生したら即停止して根本原因を取り除く文化を徹底しました。
1990年代にMITの研究者がトヨタ方式を「リーン生産」と命名し、世界の製造業に広まりました。フォード方式が大規模設備・大量在庫・専門分業を特徴とするのに対し、リーン生産は小ロット・在庫最小化・多能工・継続改善を重視します。自動車以外の産業にも波及しています。
1970年代の石油危機を機に燃費改善が急務となり、排出ガス規制も強化されました。トヨタはプリウス(1997年)でハイブリッド技術を実用化し、エンジンとモーターを組み合わせた低燃費・低排出の新市場を切り拓きました。欧米メーカーも相次いでハイブリッド車を市場投入しています。
脱炭素の国際的潮流と電池コストの低下がEV普及を加速しています。テスラが高性能EVで市場を牽引し、既存メーカーも大規模なEVシフトを進めています。自動車はソフトウェアで制御される「動くコンピュータ」へ変貌しつつあり、充電インフラの整備や電池リサイクルが新たな課題となっています。
今回は自動車産業の歴史についてお伝えしました。自動車産業はフォードの大量生産革命(20世紀初頭)、トヨタのリーン生産方式(戦後〜1980年代)、そして電動化・ソフトウェア化のEV時代(現在)という三つの大変革を経てきました。ものづくりの革新は常に社会・経済・環境の課題と絡み合いながら進化し続けています。