
中級8
組織学習・知識経営の理論
知識創造理論:SECIモデル
野中郁次郎・竹内弘高
「暗黙知」と「形式知」という2種類の知識の違いを解説し、野中郁次郎のSECIモデル(共同化・表出化・連結化・内面化)を通じて、知識がいかに組織全体に広がるかを図解します。職場の「見えない知恵」を価値に変えるための実践ポイントをお伝えします。このスライドでは、暗黙知とは何か・形式知とは何か・暗黙知と形式知の違い・SECIモデルなど、10枚のスライドでわかりやすく解説していきます。
暗黙知とは、経験の中に埋め込まれた言葉にしにくい知識のことです。個人の経験・体験の中に蓄積され、勘・コツ・判断基準として表れます。文章だけでは伝えにくく、現場や状況への深い理解と結びついています。営業の間合い・料理人の火加減・看護師の瞬時の判断・職人の手の感覚などが具体例です。「できる」けれど「説明しにくい」——それが暗黙知の特徴です。
形式知とは、共有しやすく再利用しやすい「見える知識」のことです。文書・図・数値・マニュアルとして表現でき、人から人へ伝達しやすい特徴があります。保存・検索・再利用がしやすく、標準化や教育にも向いています。業務マニュアル・チェックリスト・FAQ・データ分析レポートなどが具体例です。ただし、形式知だけでは現場の勘や文脈までは伝わりにくいという面もあります。
暗黙知と形式知は対立するものではなく、補完し合う関係にあります。暗黙知は経験・感覚・技能という形で存在し、観察・対話・共同体験を通じて共有されます。深い現場対応力が強みですが、属人化しやすい弱みもあります。一方、形式知は文章・図表・数値として存在し、記録・配布・検索で共有されます。再現性・拡張性が強みですが、文脈が抜けやすいという弱みがあります。重要なのは「どちらか」ではなく、「両方を循環させること」です。
SECIモデルは野中郁次郎が示した知識創造の4つの変換プロセスです。まず共同化(Socialization)は暗黙知から暗黙知への変換、次に表出化(Externalization)は暗黙知から形式知への変換、続いて連結化(Combination)は形式知から形式知への変換、そして内面化(Internalization)は形式知から暗黙知への変換です。知識は個人と組織の間を循環しながら拡大し、対話・記録・統合・実践が連続して起こります。この循環が進むほど、新しい価値やイノベーションが生まれていきます。
共同化とは、暗黙知から暗黙知への変換プロセスです。観察・模倣・共同体験を通じて、言葉にならない知が伝わります。OJTや同行での学び・熟練者の仕事ぶりの観察・現場での共同体験などがその方法です。職人の徒弟制度・営業同行・医療現場の見学・チームでの取り組みが具体例として挙げられます。言語化される前に、まず「共に体験する場」を持つことが重要です。
表出化とは、暗黙知から形式知への変換プロセスです。対話・比喩・モデル化によって頭の中の知を見える形にします。インタビューや対話で経験・気づきを引き出し、比喩や図解でわかりやすく可視化し、手順・原則・ポイントとして再現性のある形に整理します。ナレッジ共有会・振り返りメモ・業務フロー図・ベストプラクティス集などが具体例です。知識創造の要は、「うまく言葉にする支援」にあります。
連結化とは、形式知から形式知への変換プロセスです。すでに見える知識を整理・編集・統合することで、新たな体系や提案を作ります。レポートやデータの集約・複数の知識の比較・分類・テンプレートやマニュアルの更新・組織の知識基盤の整備などが含まれます。社内Wiki・データベース・提案資料・統合マニュアルが具体例です。連結化とは散在する知識を「使える形」へと再構成するプロセスです。
内面化とは、形式知から暗黙知への変換プロセスです。マニュアルや理論を実践・反復・経験によって自分の知恵に変えていきます。研修や演習で試し、現場で使ってみて、失敗・改善を繰り返すことで、自分なりの判断基準が育まれます。シミュレーション・ロールプレイ・PDCA・実職経験が主な方法です。「読んで終わり」ではなく「使って身につける」ことで、知識がより深まります。
今回は暗黙知と知識創造についてお伝えしました。暗黙知を価値に変えるためには、対話の場(雑談・会議・振り返りでの気づき共有)・心理的安全性(失敗や違和感を安心して話せる環境)・可視化の仕組み(メモ・Wiki・図解で残す)・越境と協働(部門を超えた知の結びつき)・実践と学習(試し、振り返り、改善する)の五つが大切です。暗黙知が共有され、形式知化され、実践を通じて新しい暗黙知へと生まれ変わる——人・場・対話・実践がそろうと、知識は創造されていきます。