周囲に人がいるほど「自分が助けなくても誰かがやる」と感じ、援助行動が起きにくくなる現象。援助には①異変に気づく→②緊急だと判断する→③自分の責任だと感じる→④実際に助けるという4段階があり、人が多いと②と③で迷いやすい。3つのメカニズム: 責任の分散(みんながいると自分の責任が小さく感じられる)、多元的無知(他の人が動かないと「大したことではない」と思う)、評価懸念(「間違っていたら恥ずかしい」と不安になり躊躇する)。
Darley & Latané は、性格よりも「状況の力」が援助行動を左右すると考えた。①責任の分散: 人が多いほど「自分がやらなくても」と思いやすい。②多元的無知: 周囲が落ち着いて見えると、緊急ではないと誤解する。③評価懸念: 間違っていたら恥ずかしい、と動きにくくなる。大勢の場面では、判断も責任も他人任せになりやすい。
参加者は部屋で質問紙に回答中、通気口から煙が入り始める。いつ報告するかを観察した。実験条件(3パターン): ①1人でいる、②3人全員が参加者、③他2人が無反応の協力者(コンフェデレートは煙に気づいても反応しないよう指示されている)。結果: 1人→約75%が報告、3人全員参加者→約38%、他2人が無反応→約10%。周囲が無反応だと「大したことはないのかも」と判断しやすい。
参加者は別室の学生とインターホンで会話中、相手が発作を起こしたような音声を聞く。助けに向かうかを測定した。自分しか聞いていないと思う→約85%が援助。ほかにも複数人が聞いていると思う→約31%が援助。人数が多い条件ほど行動開始も遅くなった。「誰かが行くだろう」という感覚が援助を弱める。
煙の部屋実験とけいれん・インターホン実験の結果から、共通してわかった3つの事実。①人数が増えるほど援助率は下がる(1人(高い)→少人数(中くらい)→多人数(低い)、両実験共通)。②状況があいまいなほど周囲を手がかりにする(煙が危険かどうか判断しにくいと周りの反応に頼ってしまう)。③誰も動かないと自分も動きにくくなる(周囲が静かなままだと「たいしたことではないのかも」と行動をためらう)。援助行動は、個人のやさしさだけでなく、その場の人数や空気に強く左右される。
人が多いほど、1人あたりにしかかる「責任の重さ」が小さくなり、行動しにくくなる。1人しかいない場面では「自分が助けるしかない」という主観的責任が高まる。周囲に大勢いる場面では主観的な責任が薄まり、最初の一歩が出にくく、人数が増えるほど起こりやすい。「自分の役目だ」と認識できるかが行動の分かれ目。
自分も不安なのに、周囲が平然として見えるため、危険ではないと誤って判断してしまう。周囲を観察する→空気を読む→判断を先送りする、というプロセスが起きる。これを「多元的無知」といい、社会的証明の影響とも関係する。
傍観者効果は日常のさまざまな場面で起こりうる。駅や街中で人が倒れる、いじめ・ハラスメントを目撃する、事故やトラブルを見かける、混雑した場所で助けを求める声を聞く。「誰か」に向けた呼びかけより「あなた、救急車をお願いします」のように名指しする方が動きやすい。大勢の前では、助ける意思があっても行動が止まりやすい。
今日からできる5つの行動: ①まず自分が反応する、②迷ったら声をかける、③役割を具体的に依頼する(「あなた」と名指しで)、④110・119などと行動を明確にする、⑤小さな援助でも始める。「誰かがやる」ではなく「自分が最初の一人になる」と考えることが傍観者効果を弱める。傍観者効果は知るだけでも弱めやすい。