スタグフレーションとは、景気停滞・物価上昇・雇用悪化が同時に進行する経済現象です。1970年代の石油危機でアメリカ・イギリスを中心に顕在化し、従来のケインズ経済学では対処できない問題として注目されました。このスライドでは、発生メカニズム・歴史的事例・政策上のジレンマを解説します。
スタグフレーションは、景気停滞・物価上昇・雇用悪化の3つが同時に起こる状態として理解できます。まず景気停滞として、GDP成長率が低く企業活動が弱まります。また物価上昇として、モノやサービスの値段が上がります。さらに雇用悪化として、失業率の上昇や賃金の伸び悩みが生じます。つまり経済は元気がないのに、生活コストだけが重くなるという厄介な状態です。
通常の経済では、景気が良いと需要が増えて物価が上がりやすく、景気が悪いと需要が弱まって物価は下がりやすい関係があります。しかしスタグフレーションでは、景気が悪いのに物価は高いまま、あるいはさらに上がるという逆の現象が起こります。不況とインフレが同時に起こるため、通常の政策では対処が難しくなります。
スタグフレーションの主な原因は「供給側ショック」にあります。まずエネルギー価格の急騰、また原材料・輸入コストの上昇が挙げられます。さらに戦争・災害・物流混乱や、生産性の低迷、通貨安・政策の失敗なども要因となります。需要が強すぎるインフレではなく、供給面の悪化が出発点になりやすい点が特徴です。
スタグフレーションが起こるまでの流れは5つのステップで理解できます。まず原油・原材料が高くなり、企業コストが上昇します。次に企業は価格を引き上げ、さらに生産・雇用を絞ります。最終的に家計負担が増え景気が弱まります。こうして物価高と景気停滞が同時進行するのです。
スタグフレーションの代表例が1970年代のオイルショックです。1973年の第一次オイルショックでは、中東情勢の緊張で原油価格が急騰し、世界的に物価上昇と景気悪化が進行しました。日本でも狂乱物価や成長鈍化が問題化しました。1979年の第二次オイルショックでも同様の現象が繰り返されました。資源価格の急変は、国全体の物価と景気を同時に揺さぶる教訓を示しています。
スタグフレーションは通常のインフレや不況とは異なります。通常のインフレは物価が上がるが景気は比較的強く、不況は景気が弱いが物価は上がりにくい状態です。一方スタグフレーションは物価が上がりながら景気も弱く、失業も増えやすいという「供給悪化による二重苦」が特徴です。物価高と不況の悪い面が同時に重なる、最も対処の難しい経済状態といえます。
スタグフレーション対応が難しい理由は、インフレと景気・雇用が反対方向に動くジレンマにあります。インフレを抑えるための利上げ・金融引き締めは物価を抑えやすい一方、景気をさらに冷やす副作用があります。逆に景気を支えるための財政出動・減税・金融緩和は雇用や需要を支えられる一方、物価を押し上げる恐れがあります。片方を改善するともう片方が悪化しやすいため、政策の選択が非常に困難です。
家計への影響として、食料品・光熱費の上昇により日々の生活費が増える一方、実質賃金は伸びにくく購買力が低下します。また将来への不安から消費を抑え、外食やレジャーが減る傾向があります。企業への影響として、原材料費・人件費の負担増でコストが圧迫され、値上げか利益圧迫かの選択を迫られます。家計も企業も余裕を失いやすく、経済全体が縮こまりやすくなります。
今回はスタグフレーションについてお伝えしました。スタグフレーションとは景気停滞と物価上昇が同時に起こる経済状態であり、供給ショックが原因になりやすい特徴があります。家計・企業・雇用に広く悪影響を与え、政策対応はトレードオフが大きいため対処が困難です。物価(CPI)・GDP成長率・失業率・賃金の伸びなど複数の指標で状態を確認することが大切です。