ジョン・ロールズ(1921-2002)アメリカの政治哲学者。①ジョン・ロールズの代表作、②近代以降の政治哲学を刷新した、③公平な社会制度の原理を考える理論、④キーワードは「公正としての正義」。個人の自由と社会的平等をどう両立するかを問う思想。
公正な社会を考える3つの要素:自由(思想・表現・信教など基本的な自由が保障されていること)、機会(誰もが能力を発揮し社会の様々な役割に就くチャンスがあること)、格差(経済的・社会的な格差が、すべての人にとってプラスになること)。①能力・家庭環境・運の違いは本人の責任だけではない。②それでも社会制度は人々に公平であるべき。③では、誰もが納得できるルールはどう決めるか。④ロールズはこの問いに制度設計の原理で答えようとした。
①原初状態=社会契約を考える仮想的な立場。②無知のヴェール=自分の性別・才能・階級・資産・価値観を知らない条件。③その条件なら、誰も特定の立場に有利なルールを選びにくい。④だから、公平な原理を導きやすい。自分の立場がわからないからこそ、誰にとっても受け入れられる公平な原理を選びやすくなる。
第1原理:基本的自由の平等(すべての人に等しく最も広範な基本的自由をもつ権利を保障する。思想・良心・信教の自由、表現の自由、結社・集会の自由、法の下の平等、人格の自由など)。第2原理:社会・経済的不平等の条件(社会・経済的不平等は2つの条件をともに満たす場合にのみ許容される。①その不平等が最も不利な立場にある人々にとっても利益をもたらすこと、②すべての人に地位や職務への機会が公正に開かれていること(公正な機会の均等))。自由の保障が出発点。
これらの自由は全員に等しく保障されるべき。すべての人が生まれや立場に関係なく、同じ基本的自由をもつ権利を持つ。多数派の利益のために簡単に犠牲にしてはならない(基本的自由は社会全体の効用や経済的利益のために制限されるべきではない)。ロールズでは自由が最優先される(基本的自由の平等は他の社会的・経済的な利益に優先する「先取的」な原理)。基本的自由の例:思想・良心の自由、言論の自由、信教の自由、結社の自由、法の下の平等、政治参加の権利。
スタートラインの違いを調整し、すべての人が同じ機会に近づける社会をめざす。現実:恵まれた環境・平均的な環境・不利な環境・強いハンディがある。社会の制度・支援(教育・福祉・反差別・情報アクセスなど)によって同じ機会のコースへ。①形式的に「誰でも応募可」だけでは不十分(ルール上は平等でも、スタートが違えば実際のチャンスは大きく異なる)。②教育・家庭環境・差別の有無などが実際の機会を左右する。③同じ才能と努力なら、似た見通しを持てる社会が望ましい。④制度は実質的な機会の平等を整える必要がある。
社会の格差は、最も不利な人の利益を改善する場合にのみ正当化される。①完全な同一化ではなく、格差の正当化条件を問う。②格差は最も不利な人にも利益をもたらすときのみ許容(社会の制度や不平等は、最も不利な立場の人の状況を改善する方向でなければならない)。③例:高い報酬が有能な人材を呼び、結果として全体とくに弱い立場の人の福祉を高める場合(成長やイノベーションの成果が教育・医療・社会保障に回り最も不利な人の利益が改善)。④ただし、弱者を置き去りにする格差は正当化されない。
①基本的自由の平等(思想・良心・表現・信教・結社・参政などの基本的自由を、すべての人に平等に)→②公正な機会均等(役職や地位はすべての人に開かれ、誰もが公正な条件のもとでそれを追求できる)→③格差原理(社会・経済的な不平等は最も不利な立場の人々にとって最大の利益となる場合にのみ正当化される)。まず自由が守られ、次に機会の公正さが確保され、その後にのみ格差の正当化が検討される。背景には最悪の状況を重視する慎重な発想(マキシミン的思考)がある。
ロールズの理論は広く支持を集めた一方で、自由・共同体・多様性との関係をめぐって様々な批判や論争を呼んできた。①ノージック(権利論的リバタリアン):再分配は個人の権利を侵すのではないか。問いかけ:社会全体の利益のために、どこまで個人の権利を制限しうるのか。②コミュニタリアン(共同体主義者):「無知のヴェール」は人間を抽象的に捉えすぎているのではないか。問いかけ:正義の原理は共同体の歴史・文化・価値観から切り離して考えられるのか。③フェミニズム・多文化主義:家庭内のケア労働や少数者の経験など、制度の外に置かれがちな領域への配慮が十分ではないのではないか。
①ロールズは「公平な社会制度」の基準を示した(個人の立場や才能に左右されない公平なルールの原理)。②自由と平等の両立を制度設計として考えた(基本的自由の平等と機会の公正な平等、格差原理を組み合わせた)。③現代の格差・再分配・公共政策を考える土台となっている。④問いは今も有効——あなたがどの立場に生まれるか分からなくても、その社会を選べるか。現代社会への応用:教育・福祉・税制・再分配・機会格差の是正・政治的公正。正義とは、誰にとっても受け入れ可能なルールを探す営み。