細胞の中でエネルギーを生み出す小器官。ミトコンドリアは、細胞呼吸によってATPをつくる。栄養+酸素→細胞呼吸(エネルギーを取り出すしくみ)→ATP。①真核生物の細胞にある ②ATP産生の中心 ③二重膜をもつ(外膜・内膜・ひだ(クリステ)・マトリックス) ④独自のDNAをもつ。「細胞の発電所」と呼ばれることが多い。
酸素が増え、共生が有利になる環境が整った。1.初期の地球:酸素が少ない。大気中の酸素はほとんどなく、生命も嫌気性環境で生きていた。2.光合成生物の登場:シアノバクテリアなどの光合成生物が登場し、酸素をつくり始めた。3.酸素の増加(大酸化イベント):酸素が大量に増え、地球環境が大きく変化した。4.好気性細菌が登場:酸素を使って効率よくエネルギーを得る好気性細菌の系統が生まれた。このあと分かること:①酸素は強いエネルギー獲得を可能にした ②酸素は一部の生命にとって有毒でもあった ③宿主細胞と好気性細菌の間に共生が生まれた。
「取り込まれた細菌」が、やがて細胞小器官になった。1.宿主細胞がいる→2.好気性細菌を取り込む→3.消化せず共生する→4.ミトコンドリアへ進化する。ことばの意味:「endo」=内側、「symbiosis」=共生。エンドシンビオシス説が示すこと:宿主はより多くのATPを得る(取り込んだ細菌の働きで効率的にエネルギーを生産)。細菌は安全な住みかと栄養を得る(宿主細胞の中で守られ安定した環境で生きられる)。長い時間をかけて役割分担が進む(遺伝子の移動や構造の変化を通じて現在のミトコンドリアへと進化した)。
宿主と細菌の「Win-Win」関係。宿主細胞のメリット:①効率よくATPを得られる ②酸素を利用できる ③大型化・複雑化に有利。細菌側のメリット:①安定した住みか ②栄養を得やすい ③外敵や環境変化から守られやすい。共生が固定化され、独立生活できない関係へ進化した。
ミトコンドリアは細菌らしい特徴を残している。①二重膜をもつ(内膜・外膜)。②独自の環状DNAをもつ(環状DNA)。③細胞分裂のように自ら増える。④細菌に似たリボソームをもつ(70Sリボソーム)。見た目やふるまいが、「かつて細菌だった」ことを示している。
DNA解析から、祖先はαプロテオバクテリアに近いと分かる。生命のなかまの系統関係(簡略図):細菌→αプロテオバクテリア(もっとも近い関係にある)と細菌→ミトコンドリア。3つの証拠:①ミトコンドリアDNAは細菌のDNAに似た特徴をもつ ②多くの遺伝子配列がαプロテオバクテリア系統に近い ③タンパク質合成の仕組みにも細菌との共通点がある。分子系統解析は、起源を探る強力な手がかり。
細菌から、宿主細胞に組み込まれた小器官へ。初期の共生体(αプロテオバクテリア)→遺伝子の整理と移動(①不要な遺伝子は減っていった ②一部の遺伝子は核ゲノムへ移った)→蛋白質の供給と統合(③多くのミトコンドリア蛋白質は細胞質で作られ後から運ばれる)→現代のミトコンドリア(④単独では生きにくい「完全な共生体」になった)。共生は「共同生活」から「機能統合」へ進んだ。
高効率なエネルギー獲得が、複雑な生命を後押しした。単細胞の先祖→複雑な真核細胞へ→多細胞生物の誕生と多様化(動物・植物・菌類)。もたらされた影響:①ATP産生能力が大きく向上 ②細胞の大型化・内部構造の複雑化を支えた ③多細胞生物の誕生と進化を促進した ④今日の真核生物の多様性につながった。高効率なエネルギー生産が、複雑で多様な生命の進化を可能にした。ミトコンドリアの登場は、生命史の大きな転換点。
ミトコンドリアは「取り込まれた細菌」の進化した姿。①起源はαプロテオバクテリアに近い細菌 ②宿主細胞との共生から生まれた ③二重膜・独自DNAなどに痕跡が残る ④遺伝子移動と機能統合が進んだ ⑤真核生物の進化を大きく変えた。今も研究が続く点:①宿主の正体の詳細 ②共生成立の正確な過程。ミトコンドリアの起源を知ることは、複雑な生命の始まりを知ることでもある。