17世紀イギリスの主な出来事:清教徒革命(1642-1649)、王政復古(1660)、名誉革命(1688)。ロックの問題意識:①専制的な王権への不信が高まった。②宗教対立と政治混乱の中で、安定した統治原理が必要になった。③ロックは自由を守りつつ秩序を保つ統治の条件を考えた。ロックの主張:自由(人は生まれながらに自由だ)、権利(生命・自由・財産などの自然権をもつ)、政府の限界(政府は人民の同意のもとに成立しなければならない)。統治論は、絶対王政を正当化する思想への対抗として生まれた。
自然状態 = 政府が成立する前の、人びとが自由で平等な状態。自然状態の見方の違い:ホッブズ(万人の万人に対する闘争、不安・不信・危険が支配する状態)VS ロック(理性と自然法が働く、理性が導く秩序と相互の尊重)。ポイント:①すべての人は生来、自由で平等である。②人は理性によって自然法を理解できる。③他者の生命・自由・財産を不当に侵してはならない。自然法が守るべきもの:生命(生きる権利を侵してはならない)、自由(自分の意思に基づき行動する権利)、財産(正当に得た財産を侵してはならない)。自然状態は自由だが、権利保護が不安定という問題が残る。
自然権 = 政府より先に存在する基本的権利。①生命(命を守られる権利)、②自由(不当な支配を受けずに生きる権利)、③財産(労働の成果を自分のものとして保つ権利)。政府は自然権を与えるのではなく、守るために存在する。この考えが近代的な人権思想の基礎となった。個人の自然権 → 政府の保護義務。自然権の保障こそ、正当な統治の出発点である。
核心の流れ(3ステップ):①自然状態(人びとは自由で平等に生活するが、権利保護は不安定)→ ②合意・契約(人びとは合意によって政治共同体をつくり、権力を委ねる)→ ③政府の成立(政府が成立し、共同体から委ねられた権力を行使して権利を守る)。ポイント:統治の源は神や王ではなく人民にある。政府の権力は委託されたものであり、無制限ではない。社会契約は権力の創設であると同時に権力の制限でもある。
正当な政治権力は、人民の同意に基づかなければならない。統治の正当性 = 人民の同意。①人びとは自らの同意によって政治共同体の一員となる。②多数決原理は共同体の意思決定を可能にする。③同意を無視する権力は正当性を失う。なぜ重要か?権力は人民の上に立つのではなく、人民から生まれる。この考えは議会政治・代議制民主主義の思想的土台となった。
神が与えた自然は共有だが、個人は自分の労働を混ぜることで財産を得る。共有された自然 → 労働を加える(自分の労働を自然に混ぜ、価値を加える)→ 私有財産の成立(労働によって加えた部分は自分のものとなる)。ポイント:①財産には土地・モノだけでなく、生命や自由も含まれる。②財産権の保護は政府の重要な役割である。③ただし浪費や過剰取得をどう考えるかは後世の論点になった。ロックの財産論は自由主義経済思想にも大きな影響を与えた。
政府は強すぎても弱すぎてもならない。ポイント:①立法権は共同体のルールを定める中心的な権力。②執行権は法律を実施し、秩序を保つ。③権力は法に従い、公共善のために行使されるべきである。正当な政府(法の支配・公共善・限定権力)VS 不当な政府(恣意・専制・権利侵害)。権力の基本的な構造:人民(権力の源泉)→ 立法権(ルールを定める)→ 執行権(法律を実施する)。ロックは後の厳密な三権分立論の先駆けとみなされることが多い。
政府が契約を破れば、人民はそれを改める権利をもつ。政府が自然権を侵害し、信託を裏切ったとき、人民は抵抗できる。ポイント:①抵抗は無秩序の肯定ではなく、権利回復のための手段である。②専制に対する抵抗は、むしろ自由を守る行為である。③名誉革命を正当化する理論としても読まれた。正当な政府 → 権利侵害 → 信託の破綻 → 抵抗・政府の交代。人民が最終的な主権の担い手であることを示す。近代革命思想や立憲主義の発展に大きな影響を与えた。
まとめ:①人は自然権をもつ。②政府は人民の同意で成立する。③権力は限定される。④権利侵害には抵抗の正当性がある。ロック思想の現代への影響:人権宣言(人は生まれながらに自由であることの基礎)、立憲政治(政府は国民の権利を保護するために成立し制限される)、民主主義(人民主権の思想は選挙や代議制に影響)、議会制(多数決と代表の権利が政治の仕組みに組み込まれた)。ロックは「国家のための個人」ではなく、「個人の権利を守るための国家」を描いた。現代政治を理解するうえで必須の古典。