
初級1
免疫学・予防医学
ワクチンの仕組みと免疫記憶
編集部
自己と非自己を見分け、危険な相手にだけ反応する免疫システムです。自然免疫から獲得免疫、ワクチンの仕組みまで、体を守る精巧なメカニズムをわかりやすく解説します。このスライドでは、まずは「自己」と「非自己」・自然免疫は「共通パターン」を探す・侵入すると「危険信号」が鳴る・樹状細胞が敵の情報を持ち帰るなど、10枚のスライドでわかりやすく解説していきます。
免疫は「自分のもの」と「体にとって異物なもの」を区別する仕組みです。自己(自分の細胞・たんぱく質)は攻撃しない一方、危険な非自己(ウイルス・細菌・寄生体)は排除の対象となります。非自己であっても無害なもの(食べ物・腸内細菌)は攻撃しないことも多いです。免疫は外から来たものすべてを攻撃するわけではなく、自己を守り危険な非自己を排除し、文脈によって反応を変える仕組みを持っています。
自然免疫では、細菌やウイルスに共通する目印を受容体で見つけます。PRR(パターン認識受容体)がPAMP(病原体に共通する目印)を認識する仕組みです。PAMPの例としては、細菌の細胞壁(ペプチドグリカン・LPS)やウイルスRNA(二本鎖RNA)などがあります。PRRがPAMPを認識すると炎症(サイトカイン放出)が起こり、他の免疫細胞が動員されます。感染初期にすぐ反応できる速さが自然免疫の大きな特徴です。
病原体や傷ついた細胞が免疫に「ここが危ない」と知らせることで、免疫反応が始まります。病原体が侵入すると、傷ついた細胞がサイトカインや危険信号を出し、樹状細胞やマクロファージなどの免疫細胞が集まります。血管が広がり白血球が出やすくなり(赤くなる・腫れる)、サイトカインのシグナルにより炎症部分に白血球が集まって次の免疫応答の準備が始まります。免疫は敵そのものだけでなく、体のダメージ情報も判断材料にしています。
樹状細胞は食べた敵を分解し、「抗原」としてT細胞に見せる役割を果たします。侵入した病原体を捕まえて細胞内で分解し、抗原の断片をMHC分子にのせて表面に提示します。その後リンパ節に移動してT細胞に抗原を提示し、免疫応答を開始させます。樹状細胞が敵の情報をT細胞と共有することで、適応免疫応答が始まります。
T細胞受容体(TCR)は、特定の組み合わせにだけ反応します。TCRが抗原提示細胞のMHCに提示された抗原をぴったり認識する仕組みです。胸腺では反応しないT細胞と自己に強く反応するT細胞が除去され、ちょうどよいT細胞だけが生き残ります。こうして自己を攻撃しにくいT細胞だけが残ることで、自己免疫の暴走が防がれています。
抗体は敵の表面の形にぴったり結合します(鍵と鍵穴の関係)。B細胞が敵の形を認識すると形質細胞(プラズマ細胞)に変化し、抗体を大量に作ります。抗体は中和(敵の働きを止める)、目印をつける(敵を免疫細胞が見つけやすくする)、食べられやすくする(白血球が見つけて食べやすくする)という働きをします。形が合う敵にだけ特異的に結合し、感染力や毒素の働きを止めます。
免疫記憶ができると、同じ敵にすばやく強く反応できるようになります。初めての敵には免疫が対応を始めるまで時間がかかりますが、2回目の感染では記憶B細胞・記憶T細胞がすぐに気づき、すばやく大量の仲間をつくって強く攻撃します。ワクチンはこの仕組みを利用しており、弱めた敵の情報を先に体に覚えさせることで、次の感染に備えることができます。
免疫には、暴走を防ぐブレーキ機構があります。まず自己に強く反応するリンパ球は作られる段階で取り除かれます(ネガティブセレクション)。また共刺激がなければ免疫細胞は本格反応しにくく、制御性T細胞(Treg)が過剰な反応を抑えてバランスを保っています。反応後はPD-1などの抑制シグナルが働き反応がおさまります。この仕組みが乱れると、自己免疫疾患やアレルギーにつながります。
今回は免疫が敵を見分ける仕組みについてお伝えしました。自己と非自己を区別し、共通パターンや危険信号を察知し、抗原提示で情報共有が行われます。その後T細胞・B細胞が特異的に反応し、記憶して次に備えます。敵の目印である抗原を認識し、自己を攻撃しない仕組みと記憶による再感染への強さが免疫の大きな特徴です。免疫は、見分ける力と学ぶ力で体を守っています。