19世紀初頭、近代戦の原型が生まれた背景。フランス革命後、国民国家と徴兵制が拡大し、戦争の規模が一気に大きくなった。ナポレオン戦争では、機動力・集中・決戦が重視された。政治目的と軍事行動が深く結びつき、戦争は国家意思の表現となった。クラウゼヴィッツは、この時代経験をもとに戦争を理論化した。フランス革命→国民軍→ナポレオン戦争→戦争論という流れで近代戦の基盤が確立された。
クラウゼヴィッツが示した、戦争を理解する3つの視点。①戦争は政治目的に従属する:戦争は独立した目的ではなく、国家の政治目的を達成するための手段。②戦争には不確実性と摩擦がつきまとう:情報は不完全で、現実は計画通りにいかない(「戦場の霧」「摩擦」)。③戦争は三位一体で動く:民衆の感情・軍の理性と創意・政府の理性(三者の動的な関係)。「戦場の霧」:戦場では情報が不完全で、何が起きているかわからないことが多い。「摩擦」:計画と現実のギャップは、訓練・準備・連携で減らせるが完全には消えない。戦争は単なる武力衝突ではなく、政治・感情・偶然が絡む複雑な現象である。
19世紀後半〜第一次世界大戦、戦争は社会全体を巻き込む。鉄道・電信・工場生産が、兵器と動員を飛躍的に強化した。兵器の量産化により、戦争は長期化・大規模化した。第一次世界大戦では長い塹壕戦が続き、消耗戦が典型化した。戦場だけでなく、経済・労働・食糧など銃後の国家動員力が問われた。①技術革新→②大量動員→③総力戦。国民皆兵の普及、電信・鉄道の発達、工業生産・労働力・国民感情も戦争の一部となった。戦争は軍隊同士の対決から、国家総動員のシステムへと変化した。
速度と統合運用が戦場の主導権を左右する時代へ。戦車・航空機・無線通信の発達で、機動戦略が高度化した。ドイツの電撃戦は、突破・包囲・迅速な展開を重視した。海・陸・空の統合作戦が戦争の勝敗を左右した。民間都市への空爆など、非戦闘員への影響が拡大した。機動力(戦車・装甲車による高速機動)、連携(無線通信による部隊間指揮)、航空支援(制空権と爆撃)、統合作戦(海・陸・空の一体化)。20世紀半ばの戦争は「量」に加えて「速度と連携」が決定的になった。
全面戦争から、抑止・均衡・代理戦へ。核兵器の登場で、大国間の全面戦争は相互破壊の危険を孕むようになった。抑止(deterrence)とMAD(相互確証破壊)が戦略の中心となった。米ソは直接衝突を避けつつ、各地で代理戦争を展開した。軍事力だけでなく、同盟・イデオロギー・情報戦も重要になった。MAD(相互確証破壊):先制攻撃をすれば相手国を壊滅できても、自国も報復攻撃を受けるため、攻撃を抑止できる。米国陣営:NATO・日本・韓国など。ソ連陣営:ワルシャワ条約機構・中国など。代理戦争:朝鮮戦争・ベトナム戦争・アフリカの紛争など。冷戦期の戦争観は「勝つ」だけでなく「起こさない」ことにも重点を置いた。
冷戦後、戦争は「見て・つないで・正確に打つ」方向へ。衛星・GPS・センサー・通信ネットワークの進歩で戦場把握が高度化した。湾岸戦争などで精密誘導兵器が注目され、限定的で高精度な打撃が可能になった。ISR(情報・監視・偵察)が戦争遂行の中核となった。ネットワーク中心の戦争(network-centric warfare)が各国の概念に導入された。探知→共有→判断→精密攻撃というサイクルで作戦が展開される。戦争の優位は、火力だけでなく「情報を先に握る力」によって左右されるようになった。
無人化が、監視・攻撃・戦術の形を変えた。UAV(無人航空機)は、偵察・監視・攻撃を一台で行えるようにした。操縦者が前線にいなくても作戦を継続できる。比較的低コストで導入でき、小国や非国家主体にも広がった。常時監視と即応攻撃により、戦場の時間感覚が変化した。ドローンの種類:偵察型(長時間飛行し広域の情報収集)、攻撃型(ミサイル等で精密攻撃)、徘徊型・自爆型(目標上空で待機し攻撃)。ドローンは戦争を「遠隔化・持続化・分散化」する重要な技術となった。
21世紀の戦場は、より分散的で継続的になった。変化・メリット:費用対効果の逆転、小部隊の能力向上(偵察・攻撃・補給が可能)、戦場環境での活躍拡大(人間が活動困難な環境でも継続)、分散・継続・常時化。課題・リスク:誤認・民間被害のリスク(遠隔攻撃による目標識別精度の問題)、自律兵器・AIの懸念(人のコントロールを超えるリスク)、責任の所在の不明確化(法的・道義的責任が不明確)、国際法・倫理の課題(現在の国際法はドローン・AI兵器への対応が不十分)。ドローンは戦争を身近で持続的なものにする一方、新たな倫理的問いを突きつけている。
クラウゼヴィッツからドローン戦まで貫く視点。変わったこと:技術(馬・鉄道・戦車・核・情報・ドローン)、規模(会戦→抑止→分散戦術)、主体(国家中心から非国家主体や小部隊の影響拡大へ)、意思決定の速度や情報量。変わらないこと:戦争は政治目的に従属する。不確実性・摩擦・霧は消えない。相手の意志をくじくという本質は続く。戦略思考と人間の判断がなお重要。戦争の「形」は大きく変わった。しかしクラウゼヴィッツの問い——「戦争の本質とは何か」——は、現代のドローン戦にも有効である。