
中級4
社会心理学
社会的アイデンティティ理論
編集部
乳児期から老年期まで、人の発達は生涯にわたって続く——エリクソンはそう主張し、各ライフステージに固有の「心理社会的危機」があることを示しました。アイデンティティ・親密性・統合性といった概念は今日の心理学・教育・カウンセリングに深く根ざしており、自分や身近な人の人生を振り返る鍵を与えてくれる理論です。このスライドでは、第1段階 乳児期:基本的信頼 vs 不信・第2段階 幼児前期:自律性 vs 恥・疑惑・第3段階 幼児後期:自主性 vs 罪悪感・第4段階 学童期:勤勉性 vs 劣等感など、10枚のスライドでわかりやすく解説していきます。
第1段階は0〜1歳頃の乳児期で、中心テーマは「安定した養育を通じて世界は安全だと感じられるか」です。この段階を肯定的に乗り越えると基本的信頼が育まれ、獲得される力は「希望」です。一方でつまずくと、不信感・不安・警戒心が強まりやすくなります。大切なのは一貫した世話・抱っこ・応答的なコミュニケーションです。乳児期に得られる安心感は、その後の対人関係の基礎になります。
第2段階は1〜3歳頃の幼児前期で、中心テーマは「自分で行動し、身体や行為をコントロールできると感じられるか」です。肯定的に育つと自律性が育まれ、獲得される力は「意志」です。つまずくと失敗を過度に責められ、恥や疑いを抱きやすくなります。やってみる機会・適度な見守り・失敗への寛容さが大切な関わりです。「自分でできた」という経験が、自信の芽になります。
第3段階は3〜6歳頃の幼児後期で、中心テーマは「自発的に行動し、遊びや挑戦を通じて目的を持てるか」です。肯定的に育つと自主性が育まれ、獲得される力は「目的」です。つまずくと、やりたい気持ちを抑え込まれ、罪悪感を抱きやすくなります。問いかけへの応答・ごっこ遊び・挑戦の後押しが大切です。好奇心を受け止めることが、主体性を育てていきます。
第4段階は6〜12歳頃の学童期で、中心テーマは「学習や活動に取り組み、努力が成果につながると感じられるか」です。肯定的に育つと勤勉性が育まれ、獲得される力は「有能感」です。つまずくと比較や失敗経験から劣等感を抱きやすくなります。努力の承認・達成経験・協働の機会が大切な関わりです。評価よりも「努力と成長」に注目することで、力が伸びやすくなります。
第5段階は12〜18歳頃の青年期で、中心テーマは「価値観・役割・進路を模索し、一貫した自己像をつくれるか」です。肯定的に育つと同一性(アイデンティティ)が確立し、獲得される力は「忠誠」です。つまずくと役割の混乱や同一性拡散が起こりやすくなります。対話・試行錯誤・居場所・ロールモデルが大切な関わりです。迷いながら選び取る経験が、アイデンティティを形づくっていきます。
第6段階は18〜40歳頃の成人前期で、中心テーマは「自分を保ちながら、他者と親密な関係を結べるか」です。肯定的に育つと親密性が育まれ、獲得される力は「愛」です。つまずくと孤立感や深い関係への回避が生じやすくなります。信頼・相互理解・対等なパートナーシップが大切な関わりです。親密さとは「自分を失うこと」ではなく、「自分を開いてつながること」です。
第7段階は40〜65歳頃の成人中期で、中心テーマは「子育て・仕事・社会貢献を通じて、次世代に関わることができるか」です。肯定的に育つと生殖性が育まれ、獲得される力は「世話」です。つまずくと自己中心化し、停滞感や空虚感を抱きやすくなります。育成・支援・仕事や地域での貢献が大切な関わりです。「自分のためだけでない関わり」が、人生の充実感を生んでいきます。
第8段階は65歳頃からの老年期で、中心テーマは「これまでの人生を振り返り、全体として受け入れられるか」です。肯定的に育つと統合性が育まれ、獲得される力は「英知」です。つまずくと後悔や無力感から絶望を感じやすくなります。人生の振り返り・承認・役割の継続・つながりが大切な関わりです。人生を物語として統合できると、穏やかな老いにつながります。
今回はエリクソンの心理社会的発達8段階についてお伝えしました。発達は子ども時代だけでなく、成人期・老年期まで続きます。各段階の危機は「失敗か成功か」ではなく、揺れながら乗り越えていく課題です。周囲の関わり方が、信頼・自律・同一性・親密性などの育ちを支えます。また、過去の課題は後の人生で再び見直し、育て直すこともできます。エリクソン理論は、人の一生を「関係の中で育つプロセス」として捉える大切な視点を与えてくれます。