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心理学史の重要研究
リトル・アルバート実験
ジョン・B・ワトソン
1961年、スタンフォード大学の心理学者バンデューラが行ったボボ人形実験は、子どもが攻撃的なモデルを観察するだけで攻撃行動を学ぶことを示した画期的な研究です。報酬や罰を介さずに他者の行動を見て学ぶ「観察学習」の概念を実証し、後の社会的学習理論の根拠となりました。教育・育児・メディアが子どもの行動に与える影響を科学的に解き明かした古典的実験です。
1961年、スタンフォード大学の心理学者バンデューラが行ったボボ人形実験は、子どもが攻撃的なモデルを観察するだけで攻撃行動を学ぶことを示した画期的な研究です。
従来の心理学の学習観では、直接の報酬や罰を通じた経験が学習の条件とされていました。しかしバンデューラは、子どもは他者の行動を見ているだけでも行動を学ぶ可能性があると考えました。本実験の目的は、攻撃的なモデルの観察が子どもの行動に与える影響を科学的に確かめることです。
実験の参加者はスタンフォード大学附属保育園の子ども72名で、男女はほぼ同数、年齢はおおむね3〜6歳でした。子どもたちは攻撃モデル群・非攻撃モデル群・統制群の3つの条件に割り当てられ、観察するモデルの行動を変えて比較されました。各群への割り当ては男女比や年齢分布が均等になるよう配慮されています。
攻撃モデル条件では、子どもは大人がボボ人形をたたく・蹴る・押すなどの行動を観察しました。モデルは木づちで強くたたくといった、はっきりとした身体的攻撃行動を示しています。さらに「ばか」「きらいだ」などの言語的な攻撃表現も含まれており、それらが模倣されるかどうかが注目されました。
非攻撃モデル群では、大人はおもちゃで静かに遊び、攻撃行動を示しませんでした。また統制群では、子どもは事前にモデルの行動をまったく観察しませんでした。この2つの条件を比較することで、攻撃的なモデルを観察することそのものが与える効果を厳密に検証できる実験設計になっています。
実験は観察・欲求不満・テストの3段階で進められました。まずステップ1として子どもが大人のモデル行動を観察し、次にステップ2として魅力的なおもちゃをすぐ取り上げることで欲求不満を引き起こします。最後にステップ3として、ボボ人形や各種おもちゃのある部屋に入れ、子どもの自由な行動を観察しました。
テスト場面では、子どもの攻撃行動が細かく記録されました。観察者は、たたく・蹴る・木づちで打つなどの模倣的身体攻撃、「バカ」「きらい」といった攻撃的な言葉をまねる模倣的言語攻撃の回数を記録しています。また、モデルと異なる形の非模倣的攻撃や、非攻撃的な遊び行動の回数もあわせて観察されました。
攻撃モデル群の子どもは他の2群と比べて攻撃的行動を多く示し、とくに見たモデルと同じような「模倣的攻撃」が顕著に増加しました。また身体的攻撃については男児で多い傾向がみられ、同性モデルの影響がより強く現れる場面もありました。この結果から、攻撃モデルを観察することで模倣的な攻撃行動が増えることが示されました。
この実験は、人が報酬や罰を直接受けなくても他者を観察することで学習できることを明らかにしました。モデルの行動は注意・記憶・再生というプロセスを経て自分の行動に移されます。この観察学習の発見は、後のバンデューラによる社会的学習理論の重要な根拠となりました。
本実験の意義として、子どもの行動形成におけるモデルの重要性を科学的に示した点があり、家庭教育・学校教育・メディア研究に大きな影響を与えました。一方で限界もあり、実験室での短期的な観察であるため現実の複雑な行動すべてを説明するわけではなく、倫理面や文化差への検討も必要です。今回はバンデューラのボボ人形実験についてお伝えしました。子どもは「見ること」を通して行動を学ぶという発見は、周囲の大人やメディアの影響を考えるうえで今も重要な視点です。