
中級12
経営戦略
多角化戦略
編集部
「市場浸透・新製品開発・新市場開拓・多角化」という4象限で成長の方向性を整理するアンゾフのマトリクスを解説します。各戦略のリスクと難易度を比較しながら、自社に合った成長の打ち手を選ぶ実務的なフレームワークを学んでいきます。
アンゾフの成長マトリクスは、市場と製品の「既存・新規」の組み合わせで成長の方向性を整理するフレームワークです。既存市場×既存製品が「市場浸透」、既存市場×新規製品が「新製品開発」、新規市場×既存製品が「新市場開拓」、新規市場×新規製品が「多角化」となります。右上に行くほど一般に不確実性とリスクは高まりやすい点が重要です。
市場浸透とは、既存市場で既存製品の売上をさらに伸ばす戦略です。狙いはシェア拡大・購入頻度向上・顧客維持であり、値引き・販促・CRM・クロスセル・利用頻度向上などが施策例として挙げられます。比較的低リスクで実行しやすいのがメリットですが、市場が飽和していると伸びしろが限られます。4戦略の中では最も基本となるアプローチです。
新製品開発とは、既存市場に対して新しい製品・サービスを提供する戦略です。既存顧客の新たなニーズを満たすことを狙いとし、新機能追加・新商品投入・上位プラン開発などが施策例となります。既存顧客基盤を活かせるのがメリットですが、開発コストや製品失敗リスクがある点に注意が必要です。顧客理解と商品開発力が重要であり、既存顧客の課題や要望を深く理解して新しい体験を提供することが求められます。
新市場開拓とは、既存製品を新しい市場や顧客層に広げる戦略です。販路拡大・地域拡大・新セグメント獲得を狙い、海外展開・法人向け販売・別年代向け訴求などが施策例です。既存製品を活かして成長余地を広げられますが、市場理解とチャネル開拓が必要です。営業力と市場理解がカギを握ります。
多角化とは、新しい市場に対して新しい製品を提供する戦略です。新たな収益源をつくることを狙いとし、異業種参入・新ブランド立ち上げ・新規事業開発などが施策例です。成功すれば大きな成長機会になりますが、4戦略の中で最もリスクが高い点を理解しておく必要があります。関連多角化(既存事業と関連する領域へ進出)と非関連多角化(既存事業と関連しない領域へ進出)の2種類があります。
4つの戦略を成長性・難易度・リスクで比べると、市場浸透は成長インパクト・実行難易度・リスクともに低〜中、新製品開発は中、新市場開拓は中〜高、多角化は高という傾向があります。一般に既存から離れるほど不確実性が増します。まず市場浸透で基盤を固め、その後に他戦略へ広げる考え方も有効です。
実務でアンゾフのマトリクスを使う基本ステップは4つです。まず既存市場・既存製品の強みを確認して現状を把握し、次に4象限に施策案を並べて選択肢を整理します。そして収益性・実現可能性・リスクで比較評価し、最後に優先順位を決めて実行・検証します。自社の資源・ブランド・営業力・開発力を踏まえることが重要です。「どこで勝てるか」を構造的に考えるための道具として活用できます。
コーヒーチェーンを例に4戦略を具体的に見てみましょう。市場浸透では既存店でアプリ会員向けキャンペーンを強化し、新製品開発では季節限定ドリンクや新フードを投入します。新市場開拓ではオフィス向け法人販売や海外出店を行い、多角化ではコーヒー豆サブスクやライフスタイル商品へ展開するといった具合です。同じ企業でも戦略の方向性は複数あり、重要なのは自社の強みと市場機会の組み合わせです。
今回はアンゾフの成長マトリクスについてお伝えしました。市場と製品の既存・新規の組み合わせで4つの成長戦略を整理するフレームワークです。市場浸透は既存市場でシェアを高め収益基盤を強化し、新製品開発は既存市場に新しい価値を提供して成長を加速します。新市場開拓は既存の強みを活かして新しい市場で成長を狙い、多角化は新しい市場に新しい製品でチャレンジします。「どの象限の施策か」を意識するだけでも議論の質が上がります。