標準模型は素粒子物理学の集大成だが、重力を含むことができない。一方、一般相対性理論は宇宙の大きな構造を説明するが、量子力学と矛盾する。超ひも理論は、この2つの理論を統一する候補として登場した。すべての粒子とすべての力を1つの枠組みで説明しようとする。
粒子を点ではなく「ひも」として扱う。開いたひも(両端が自由)と閉じたひも(ループ状)の2種類がある。ひもの振動モードの違いが、電子・クォーク・光子などさまざまな粒子の種類を決める。閉じたひもの振動モードの1つが、重力を伝える粒子=グラビトン(重力子)に対応する。
物質を構成するフェルミ粒子(電子・クォークなど)と、力を伝えるボース粒子(光子・グルーオンなど)が対称性を持つという考え方。すべての粒子には「超対称パートナー」が存在すると予言する。超ひも理論には超対称性が組み込まれており、これが「超」の由来でもある。
超ひも理論が数学的に矛盾なく成立するためには、10次元の時空が必要。私たちが認識できるのは4次元(空間3次元+時間1次元)だが、残る6次元はプランクスケール(10のマイナス35乗メートル)で折りたたまれ、隠れているとされる。カラビ=ヤウ多様体という複雑な形状に折りたたまれている可能性がある。
重力が自然に現れることが超ひも理論の大きな特徴。閉じたひもの振動モードの1つとして重力子(グラビトン)が予測される。このため超ひも理論は、量子論と重力の統一候補として注目される。点粒子理論では計算が無限大(発散)になるのに対し、超ひも理論では高エネルギーでの発散が抑えられる可能性がある。
かつては5種類の超ひも理論(Type I、Type IIA、Type IIB、Heterotic SO(32)、Heterotic E8×E8)が独立して存在すると考えられていた。双対性(duality)により、それらは互いに関係していることが分かってきた。その背後に「M理論」という11次元の理論があるという見方がある。
ひもだけでなく、高次元の膜(brane)も重要な役割を持つ。Dブレーンとは、ひもの端が付着できる高次元の膜のような存在。開いたひもはブレーン上に留まり、力や物質と関係づけられる。閉じたひもは空間全体を動けるため、重力と結びつきやすい。私たちの宇宙自体が1枚のブレーンかもしれない、という発想もある。
超ひも理論が本格的に現れるスケールは非常に高エネルギーで、実験が難しい。超対称粒子や余剰次元は、まだ決定的には観測されていない。解の数が非常に多く、どれが私たちの宇宙に対応するかが課題(ランドスケープ問題)。それでも量子重力や宇宙論の研究に大きな影響を与え続けている。
超ひも理論は、粒子を点ではなくひもとして捉える。超対称性・余剰次元・重力を統一的に説明しようとする。特に重力を量子論に取り込める点が大きな魅力である。まだ未完成で証拠の乏しい部分も多いが、現代物理学の重要な研究テーマである。自然界の最深部を理解するための、壮大な理論的挑戦。