
中級4
量子力学
不確定性原理
編集部
超伝導とは、ある温度以下で電気抵抗がゼロになり、磁場を内部から排除する現象です。1911年にオランダの物理学者カマリン・オンネスが水銀を4.2Kまで冷却したときに電気抵抗が突然ゼロになることを発見しました。超伝導は極低温で現れるため、液体ヘリウム温度(4.2K)付近で研究・利用されています。電気抵抗ゼロ・マイスナー効果・極低温というキーワードを軸に解説していきます。
普通の金属は電流が流れると抵抗があり熱が発生します(ジュール熱)。一方、超伝導体は臨界温度(Tc)以下で抵抗がゼロになり、エネルギーロスなく電流が減衰せずに流れ続けます。普通の金属は常温でも抵抗がありますが、超伝導体は臨界温度以下でのみ超伝導状態になります。臨界温度Tc以下では抵抗が0になり、わずかな電圧でも大きな電流が流れます。
超伝導体では2つのことが同時に起きます。まず電気抵抗がゼロになり、エネルギー損失なく発熱しない高効率な状態になります。また抵抗がゼロのため、いったん流れた電流は減衰せず、超伝導ループ(閉じた回路)で非常に長い時間流れ続けます。このように超伝導体ではエネルギーを無駄にせず、長時間にわたって安定した電流利用が可能になります。
超伝導体が超伝導状態になると、内部の磁場を排除し、磁場が物質内部に侵入できなくなります。これをマイスナー効果といいます。通常の物質では磁場が内部に入りますが、超伝導体では磁場が内部に入らないため磁気浮上が起こります。マイスナー効果は電気抵抗ゼロとは別の重要な特徴であり、超伝導の2大特性の一つです。
超伝導が起きる基本的な考え方は、電子が「クーパー対」というペアになって協力して動くというものです。電子が2つ1組のクーパー対をつくり、格子振動との相互作用が関係することで、バラバラに散乱されにくくなり抵抗ゼロにつながります。クーパー対が格子の中を協力して進むことで抵抗が生じません。なお高温超伝導体ではクーパー対の成り立ち方が異なる可能性があり、詳しいメカニズムは現在も研究が続いています。
超伝導状態は3つの臨界条件を超えると壊れてしまいます。臨界温度Tcを超えると超伝導は消え、強すぎる臨界磁場でも消えてしまいます。また大きすぎる電流(臨界電流)でも超伝導状態が壊れます。超伝導は万能ではなく、これらの条件を守って運用する必要があります。
超伝導体には大きく分けて低温超伝導体と高温超伝導体があります。低温超伝導体の代表例はニオブ合金(NbTi、Nb3Snなど)で、液体ヘリウム温度(4.2K)付近の非常に低い温度で動作し、MRI・粒子加速器・核融合装置などに利用されています。高温超伝導体の代表例は銅酸化物(YBCO、Bi系など)で、液体窒素温度付近(77K)でも使えるものがあり、電力機器・送電ケーブル・リニアモーターカーなどへの応用が期待されています。多くの超伝導体は第二種超伝導体(Type II)で、強磁場中でも超伝導が保たれやすく実用上有利です。
超伝導の応用はさまざまな分野に広がっています。MRI(磁気共鳴画像診断)では超伝導磁石の強力な磁場で人体内部を高精度に画像化し、リニアモーターカーでは超伝導磁石による磁気浮上・推進力で超高速移動を実現します。また粒子加速器では超伝導電磁石で粒子を加速し素粒子物理研究に貢献し、量子コンピュータでは超伝導回路で量子ビットを制御します。送電ケーブルでは電力の損失をほとんどなくして効率的な送電が可能になります。超伝導は今も進化し続ける「未来を支える技術」です。
超伝導は多くの利点を持ちますが、実用化にはいくつかのハードルがあります。まず冷却コストが高く、多くの超伝導体は極低温が必要で装置コストが高くなります。また材料が壊れやすいものもあり、セラミックス系などは機械的にもろく割れやすいです。さらに強磁場や大電流で性能が制限され、クエンチが起きる可能性もあります。製造や維持にも高度な技術が必要であり、研究の焦点は「より高温で動く・扱いやすい材料の開発」にあります。
今回は、超伝導とは何かについてお伝えしました。超伝導は特定の条件下で電気抵抗がゼロになり磁場を排除する特別な状態です。抵抗ゼロ・マイスナー効果・極低温での発現・多くの先端技術への応用が主な特徴です。実用化には冷却コストと材料の課題が残りますが、室温超伝導が実現すればエネルギー・医療・交通・計算技術に大きな変化をもたらす可能性があります。超伝導は未来技術を支える重要な物理現象です。