2人の容疑者が逮捕され、別々の部屋に隔離されている。囚人Aと囚人Bはそれぞれ独立に選択する。会話できない(情報をやり取りすることはできない)。相手の選択は分からない(協力か裏切りか知ることができない)。同時に意思決定する(お互いの選択を知らないまま同時に選択を行う)。あなたの目的は、自分の刑期をできるだけ軽くすることです。
囚人B:協力(黙秘)/囚人B:裏切り(自白)の2列。囚人A:協力(黙秘)→A1年/B1年 / A3年/B釈放。囚人A:裏切り(自白)→A釈放/B3年 / A2年/B2年。両者にとっては協力が望ましいが、個人には裏切りの誘惑がある。※数字は分かりやすい典型例。
自分の利益だけを考えると、どの状況でも「裏切る」方が得に見えてしまう。相手が協力するなら→裏切ると自分は釈放(0年)、協力し続けると自分は刑期が残る。相手が裏切るなら→自分も裏切れば2年で済む、協力し続けると自分は懲役3年。どちらの場合でも「裏切り」が個人にとって有利に見える。しかし、2人とも裏切ると全体としては悪い結果になる(お互いに懲役2年)。これが「囚人のジレンマ」の核心。
①参加者を2人1組にする(知らない相手とランダムにペアを組む)。②互いに話せない状態にする(別室やPC上で実施し、相手と連絡が取れないようにする)。③協力か裏切りを同時に選ぶ(お互いの選択は相手に知らされないまま確定される)。④結果と報酬を集計する(各自の報酬(ポイントや現金)を支払う)。実験には2つのタイプがある: 一回限りのゲーム(各ペアが一度だけ対戦する)、繰り返しゲーム(同じ相手と何回も対戦する)。匿名性が高いほど裏切りが増えることがある。報酬の大きさやルール設計が協力を促すことがある。
一回限りのゲームでは裏切りが選ばれやすい。なぜ「裏切り」が選ばれやすいのか:①相手を信じにくい(相手がどう行動するかわからないから)、②裏切られる不安がある(協力したのに相手に裏切られると損をしてしまう)、③目先の得が魅力(今すぐに自分の得になる選択が魅力的に見える)。一度きりの関係では協力が崩れやすい。
しっぺ返し(Tit for Tat)の戦略: ①最初は協力(まずは相手を信じて協力から始める)、②相手が協力なら次も協力、③相手が裏切ったら次は裏切る(対抗する)。協力が続く理由・メリット: ①将来の関係がある(今の協力が将来の利益につながる)、②評判が働く(協力的な評判が得になり、裏切りは損になる)、③裏切りにコストが生まれる(相手からの信頼や協力を失い、将来の得を逃す)。未来があるほど、人は協力しやすい。繰り返しの関係や評判が、協力を生み、より良い結果をもたらす。
協力する理由: 信頼(相手を信じることで、より良い結果が生まれる)、公平感(公平・公正であることが関係を安定させる)、長期的な得(将来の大きな利益のために今は協力する)、相互協力への期待(お互いに協力し合えば全員が得をする)。裏切る理由: 目先の利益(今すぐ手に入る利益を優先してしまう)、不信(相手を信じられず協力しても裏切られると思う)、損をしたくない(自分だけが損をするくらいなら裏切ってしまう)、相手に先を越される不安(相手に得を取られる前に先に裏切ってしまう)。人の行動は性格だけでなく、状況や制度設計にも左右される。
個人や組織が合理的に行動しても、結果として全体にとって望ましくない状況になる例は身の回りにたくさんある。①企業の価格競争(シェアのために値下げを続けると企業の利益が減り品質も落ちる)、②環境問題・気候変動(自国の経済を優先しすぎると、みんなで削減しないと意味がない地球規模のリスクが高まる)、③軍拡競争(相手より強い軍備を持とうとするあまり、コストや緊張だけが増える)、④職場のチームワーク(自分はなるべく少なく働きたいが、チーム全員がそれをすると誰も成果を上げられなくなる)。短期的な自分の得を優先すると、全体にとって損になる場面は多い。
ゲーム理論が教えてくれる、協力のカギ。①個人合理性が集団不合理を生む(それぞれが自分にとって最善を選ぶと、全体としては望ましくない結果になることがある)。②一回限りでは裏切りが起こりやすい(将来がなければ裏切る方が得になりやすい)。③繰り返し・信頼・制度が協力を育てる(繰り返しの関係、信頼の積み重ね、ルールや仕組みが、協力を安定して生み出す)。④社会問題やビジネスにも応用できる(環境問題、公共財、組織運営、価格競争など)。人は完全に利己的でも、完全に協力的でもない。「仕組み」しだいで協力は増やせる。