1936年に刊行されたケインズの主著です。大恐慌という未曾有の危機のなかで、市場が自動的に完全雇用を達成するという古典派の常識を根底から覆し、「有効需要」が経済全体の生産と雇用を決めると論じた。このスライドでは、時代背景:なぜこの理論が必要だったのか・古典派との違い・有効需要の原理・ケインズ『消費関数』など、10枚のスライドでわかりやすく解説していきます。
1929年の世界恐慌以後、企業活動は縮小し大量失業が長期化した。賃金が下がれば自然に景気は回復する、という古典派の見方では現実を説明しきれなかった。①不況が長引いた ②価格や賃金だけでは回復できない ③総需要の不足が問題になった。ケインズが問い直したこと:市場は自動的に完全雇用へ戻るのか、なぜ企業は投資を控えるのか、政府は何をすべきか。
古典派は市場が柔軟に調整されれば完全雇用が実現すると考えた。これに対しケインズは、需要不足によって失業均衡が起こりうると主張した。古典派:賃金や価格は柔軟、供給が需要を生む(セイの法則)、利子率が貯蓄と投資を調整、完全雇用が基本。ケインズ:賃金が下がっても需要は回復しないことがある、有効需要が生産と雇用を決める、投資は期待と不確実性に左右される、不完全雇用均衡が起こりうる。ポイント:経済全体では「需要不足」が核心問題になる。
生産と雇用を決めるのは「実際に見込める需要」。企業は「売れそうだから作る」のであり、需要の見込みが弱ければ生産も雇用も増えない。ケインズはこの需要の大きさを有効需要と呼んだ。総需要(消費+投資)→企業の生産判断→雇用量→所得→所得が消費を生み需要へ戻る。①需要が弱いと総需要規模は小さくなる ②企業は生産を抑える ③失業が発生する。ポイント:供給側だけでは景気は決まらない、総需要の規模が経済全体を左右する。
所得が増えると消費も増えるが、同じ割合では増えない。ケインズは家計の消費は所得に依存すると考えた。ただし所得が増えても、消費の増え方は1対1ではなく、一部は貯蓄に回る。①基礎的消費:所得がゼロでも必要な最低限の消費。②限界消費性向:所得が1増えたときに消費がどれだけ増えるかを示す割合(0〜1の値)。③貯蓄の増加:所得の増加分の一部は消費されず貯蓄に回る。意味:投資や政府支出が補完的に重要。
企業は将来の収益見通しによって投資を決める。投資は金利だけで決まるのではなく、企業は将来どれだけ利益が見込めるか、その期待効率(資本の限界効率)が高いときに投資を行う。①期待が明るい→投資増、期待が暗い→投資減。②利子率が上がると投資が減る。③不確実性が投資を左右する:利子率が下がっても企業がリスクを感じれば投資は増えない。ポイント:投資は景気変動の中心変数、企業心理が需要の変動を増幅させる。
ケインズは利子率を「お金を手放すことへの報酬」として捉えた。人々は取引・予備・投機の目的で貨幣を保有し、その貨幣需要と貨幣供給が利子率に影響する。①取引動機:日常の取引のために必要な貨幣を持つ。②予備的動機:予期しない支出や不測の事態に備える。③投機的動機:将来の金利低下によるキャピタルゲインを期待。理解のポイント:利子率は貯蓄の我慢代だけではない、不安が強いと貨幣需要が増える、金融政策はここに働きかける。
不況では「働きたいのに働けない」失業が起きる。ケインズは失業の原因を賃金の高さだけに求めなかった。総需要が不足すれば、企業は生産を減らし、結果として非自発的失業が生じる。①賃金引き下げだけでは解決しない。②需要回復が雇用回復の鍵:需要が回復すれば企業は生産を拡大し雇用も増える。③非自発的失業が起こりうる:仕事への意思と能力があるのに仕事が得られない状態。重要概念:完全雇用は自動達成されない、政府の雇用拡大政策に意義がある。
政府支出は一度で終わらず、所得を連鎖的に増やす。政府が支出を増やすと、それが誰かの所得になり、さらに消費へ回ることで経済全体を拡大する。これが乗数効果であり、ケインズ政策の重要な基礎となった。乗数 = 1 ÷ (1 - 限界消費性向)。①需要を直接支える ②雇用拡大につながる ③需要不足の局面で財政支出が効果的。政策的含意:民間需要が弱い時に最も役立つ、適切な財政政策には限界もある。
ケインズの理論は、恐慌や失業をマクロ全体の需要不足と捉え、現代の景気対策やマクロ経済政策に大きな影響を与えた。①マクロ経済学の基盤を作った ②戦時の財政政策を理論化した ③雇用と需要の関係を明確化した ④新古典派・新ケインズ派へ発展。論点:インフレへの影響、政府介入の限界、長期的な財政の健全性。要するに:景気と雇用を理解するには、需要の視点が欠かせない。