グーテンベルク以前のヨーロッパでは、本は主に修道院や写字生の工房で筆写によって作られていました。時間がかかり費用も高く、本はとても貴重なものでした。また、写し間違いや写本ごとの違いが生じることもありました。写本は手作業で作られ、完成まで時間と費用がかかり、本の一部の人しか持てませんでした。印刷革命の価値は、従来の本づくりの不便さを知ると分かりやすいです。
ヨハネス・グーテンベルク(約1400〜1468年)は、ドイツ・マインツの金細工師の家に生まれました。金属加工の技術をもとに印刷技術の研究に取り組み、可動式活字と印刷機を実用化しました。約1400年ごろマインツに生まれ、金属加工の技術を身につけ、印刷技術の研究と試作を進め、1450年代に印刷事業を本格化させました。技能・資金・探究心を融合させ、既存技術を組み合わせて実用化した点が彼の強みでした。
活版印刷は「文字を組み、インクをのせ、圧力で刷る」仕組みです。①活字を並べて版を組む(一文字ずつの活字を並べ印刷したい文章を作る)、②版に油性インクをのせる(ローラーなどで均一にインクを乗せる)、③紙を置いて印刷機で圧力をかける(スクリューを回して圧力を加え紙にインクを転写する)、④同じページを何度も刷る(インクをつけ直しながら効率よく印刷する)。同じ版から何枚も刷れることが、写本にはない大きな利点でした。
グーテンベルクは1文字ずつ独立した金属活字を使って文字を印刷し、印刷後は分解して再利用できる仕組みを完成させました。耐久性・均一性・スピードに優れ、印刷の効率と品質を大きく向上させました。活字はパンチ(彫刻)→マトリクス(鋳型)→手込み鋳造という工程で作られます。1文字ごとに独立した活字を組み替えと再利用ができるため大量印刷に向いており、金属活字の再利用性が印刷の経済性を高めました。
「42行聖書」とも呼ばれるグーテンベルク聖書は、1450年代に印刷されたグーテンベルクの代表作で、現存する初期印刷本の中で最も有名なものです。印刷の完成度の高さと写本に劣らない美しさを実証しました。装飾的なイニシャルや細密画が書の美しさを引き立て、手書きの写本的な美観を印刷で実現しています。1ページあたり42行の本文を2段組で印刷したことから「42行聖書」と呼ばれています。「速く作れる」だけでなく「美しく作れる」ことも証明しました。
活版印刷は速さ・安さ・同一性の3点で革命的でした。写本(手書き)では1人の写字生が1冊を作り、コストが高く、1冊に数か月〜年単位かかり写し間違いも起きました。活版印刷では1台の印刷機で多くの数を生産でき、初期コスト後は1冊あたりの費用が低下し、短時間で多くの本を同一内容で正確に複製できます。印刷術は本を「希少品」から「流通する情報媒体」へ変えました。
グーテンベルクの印刷技術は書物を大量にし誰もの手に届けることを可能にしました。①宗教:聖書や宗教文書が多くの人に届き、民間の宗教観や信仰が広く伝わりました。②教育:教育用テキストが普及し、学者の外でも学べる人が増えました。③科学:研究や発見を記した文章が多くの人に届き、知識の議論や積み重ねが加速しました。印刷技術は、近代ヨーロッパの知的変化を支える土台になりました。
グーテンベルクが生み出した印刷術は15世紀後半から各地へ広がり、ストラスブール、ヴェネツィア、パリなどヨーロッパの主要都市に拡散しました。技術者が各地へ移動し各都市で印刷所が誕生し、本の流通網が拡大して印刷文化の基盤が形成されました。グーテンベルクの技術は一人の発明を超えてヨーロッパ全体の産業へ発展しました。
①活版印刷は知識の複製を変えた、②本をより身近な存在にした、③宗教・教育・科学の発展を後押しした、④現代の情報社会にもつながる転換点だった。グーテンベルクの革新は、今日の「情報を広く届ける技術」の原点といえます。15世紀の印刷革命は、現代のデジタル革命にも通じます。