
中級6
国際関係論
国際政治理論
ケネス・ウォルツ
グローバルサウスとは、主にアジア・アフリカ・中南米などの新興国・途上国を指す概念で、地理的な「南」だけでなく歴史・経済・国際関係の文脈を含みます。先進国中心の秩序に対して独自の立場や発言力を強めており、人口増加・市場拡大・資源保有・若い労働力という四つの要素で世界経済の成長エンジンとして注目されています。ただし内部は多様で、政治体制・所得水準・発展段階は大きく異なるため、一括りで語るのではなく国や地域ごとの違いを理解することが重要です。
グローバルサウスという概念の背景には植民地支配の歴史があります。第二次世界大戦後に独立運動が各地で進み、新興国が誕生すると、1955年のバンドン会議ではアジア・アフリカ諸国が連帯を表明しました。「第三世界」「途上国」などと呼ばれ変わってきた呼称が、現在は「グローバルサウス」として定着しつつあります。冷戦的な二項対立に基づく「第三世界」と異なり、「グローバルサウス」はより積極的な主体性と多様性を含む概念として使われています。
グローバルサウスは一枚岩ではなく、多様な国と地域から成ります。アジアのインドやインドネシア、アフリカの南アフリカやナイジェリア、中南米のブラジルやメキシコ、中東の一部などが含まれます。国ごとに所得水準・人口規模・政治体制・産業構造が大きく異なり、「グローバルサウス=貧しい国の集まり」と単純化はできません。歴史・文化・資源・産業・政策の違いによって抱える課題も成長の可能性も国ごとに大きく異なります。
人口・市場・資源・デジタル化が世界の重心を動かしているため、グローバルサウスへの注目が高まっています。若い人口が多く労働力と消費市場の拡大が期待され、都市化と中間層の増加が内需を引き上げています。エネルギー・鉱物・農産物などの豊富な資源保有国としての重要性も増し、スマホ・決済・通信の普及による飛び越し型のデジタル成長も起きています。企業にとっては新たな成長市場として、国際社会にとっては持続的成長と貧困解決の鍵として、グローバルサウスの存在感は増す一方です。
グローバルサウスは世界経済の成長センターとしての役割を強めています。多くの国が高い経済成長率を維持し、製造業の発展・農業の近代化・サプライチェーンの分散先としても注目されています。BRICSを中心に南南協力や新興国間の経済ネットワークが拡大し、生産・市場・資源・投資という四つの領域で国際経済への貢献が増しています。一方で通貨安・インフラ不足・外部ショックへの脆弱性といった課題も残っています。
多くのグローバルサウス諸国は米中・欧米・ロシアのいずれかに与せず、事案ごとに独自のスタンスをとる「マルチアライメント」の姿勢をとっています。G20・BRICS・ASEAN・アフリカ連合などの多国間の場で発言力を強め、エネルギー・食料・安全保障・気候変動などの問題で独自の声を持ちます。より公正な国際的枠組みを求める声が高まり、「従う側」から「共に作る側」へと、自国利益を軸に対話・競合・改革を通じた国際政策実現を目指しています。
グローバルサウスは大きな成長可能性を持つ一方、深い構造問題も抱えています。貧困や所得格差・教育と医療へのアクセス不足・インフラとエネルギー供給の不安定さ・債務問題と通貨不安・気候変動による災害リスク・政治不安定や汚職といった課題が相互に連動しています。しかし若い人口と豊かな自然資源・デジタル技術の普及・南南協力による投資拡大という成長機会も同時に存在しており、課題の克服と可能性の活用を両立させるバランスの取れた支援と協力が重要です。
グローバルサウスと先進国の関係は、協力・依存・競争が入り混じる複雑なものです。貿易・投資・援助・技術移転を通じて深く結びついている一方で、資源依存・債務依存・ルール形成での不利な立場といった摩擦もあります。近年は自立性を高め、より対等なパートナーシップを求める動きが強まっており、インフラ整備・脱炭素・保健・教育などで協力の余地は大きいです。相互理解と尊重のもと、持続可能で包摂的な発展を実現する関係が求められています。
日本にとってグローバルサウスは、市場・資源・外交・人材交流の四つの柱で無視できない存在です。成長市場としての投資と輸出機会の拡大、安定的な資源調達の相手、社会課題解決に向けた協力のパートナーという役割があります。食料・製造業を通じて多分野で関係が深く、サプライチェーン面でも重要です。グローバルサウスの動向は国際関係に大きく影響するため、互いの強みを生かした対等なパートナーとして共に成長できる関係を持続可能な発展につなげることが重要です。
今回は、グローバルサウスについてお伝えしました。単なる途上国の集まりではなく多様な国々の総称であり、世界経済・人口・資源・外交において存在感を高めています。大きな成長可能性と、格差・債務・気候変動などの課題が併存していますが、これからの国際社会を考えるうえでグローバルサウスの視点は欠かせません。世界の重心がより多極化する中、一国ごとの差異を丁寧に見ることが理解の第一歩です。