新興国・途上国を中心に、世界経済と国際政治で存在感を高める国々。定義:「グローバルサウス」は主にアジア、アフリカ、中南米などの国々を指す概念。地理的な『南』だけではなく、歴史・経済・国際関係の文脈を含む。特徴:先進国中心の秩序に対し、独自の立場や発言力を強めている。南南協力や多国間の枠組みで、より公正な国際秩序を模索。注目理由:人口増加(世界の大半の人口が集中)、市場拡大(中間層の拡大と消費の伸び)、資源保有(エネルギー・鉱物・食料などが豊富)、若い労働力(生産年齢人口が多く成長の原動力に)。ただし内部は多様で、政治体制・所得水準・発展段階は大きく異なる。一つのまとまりで語るのではなく、国や地域ごとの違いを理解することが重要。
『第三世界』から『グローバルサウス』へ。植民地支配の時代:アジア・アフリカ・中南米の多くの国が植民地支配下に置かれ、独立を果たしていった。独立の広がり:第二次世界大戦後、各地で独立運動が進み、新興国が相次いで誕生した。冷戦時代の対峙:米ソ両大国のいずれにも属さない第三の勢力として存在感を示した。1955年のバンドン会議では、アジア・アフリカ諸国が連帯を表明。言葉の変遷:「第三世界」「途上国」「発展途上国」「新興国」などと呼ばれ変わり、現在は「グローバルサウス」という呼称が定着しつつある。「第三世界」が冷戦的な二項対立の枠組みに基づくのに対し、「グローバルサウス」はより積極的な主体性と多様性を含む概念として用いられている。
一枚岩ではなく、多様な国と地域から成る。代表例:アジア(インド、インドネシアなど)、アフリカ(南アフリカ、ナイジェリアなど)、中南米(ブラジル、メキシコなど)、中東の一部(サウジアラビアなど)。国ごとに大きく異なる点:所得水準、人口規模、政治体制、産業構造。さまざまな国のタイプ:人口大国(インド、ナイジェリア、インドネシアなど)、資源国(サウジアラビア、ナイジェリア、ブラジルなど)、製造拠点(インド、インドネシア、メキシコ、南アフリカなど)、新興市場・観光国(メキシコ、インドネシア、タイ、モロッコなど)。「グローバルサウス=貧しい国の集まり」と単純化できない。歴史・文化・資源・産業・政策の違いによって、抱える課題も成長の可能性も国ごとに大きく異なる。
人口・市場・資源・デジタル化が世界の重心を動かす。1 人口:若い人口が多く、今後の労働力と消費市場の拡大が期待される。2 市場:都市化と中間層の増加が内需を引き上げる。3 資源:エネルギー・鉱物・農産食糧などの豊かな資源保有国として重要。4 デジタル:スマホ・決済・通信の普及で飛び越し型のデジタル成長が起きている。これらの変化が重なり、グローバルサウスは世界経済の成長エンジンとして存在感を高めている。企業にとっての意味:新たな成長市場の拡大、サプライチェーンの多様化、投資先の拡大、イノベーションの促進。国際社会にとっての意味:持続的な成長の実現、貧困・格差問題の解決支援、エネルギー安全保障、国際協力の実現。
世界経済の成長センターとしての役割。成長の要因:多くの国が高い経済成長率を維持し、世界経済に貢献している。製造業の発展・農業の近代化などが重要要因。サプライチェーンの分散先として注目される。グローバルサウスの経済的役割(4つの重要な領域):生産(製造拠点・輸出)、市場(人口増加・中間層拡大)、資源(エネルギーや農産物などの資源供給)、投資(インフラ投資への需要)。国際経済における新たなネットワーク:BRICSを中心に南南協力や新興国間の経済ネットワークが拡大。成長の制約:通貨安や為替相場の不安定さがリスク。インフラ・制度面の整備が不十分な国も。外部ショックへの脆弱性が課題。
どちらか一方ではなく、自国利益を軸に動く。多くの国は米中・欧米・ロシアのどちらにも与せず、事案ごとに独自のスタンスをとる「マルチアライメント」の姿勢がある。G20、BRICS、ASEAN、アフリカ連合などの多国間の場で発言力を強めている。エネルギー・食料・安全保障・気候変動などの問題で独自の声を持つ。国際秩序の見直し、より公正な国際的枠組みを求める声が高まっている。多角的外交:地政学的な位置や複数地域との対話を活用。交渉力:資源・人口・土地の豊富さを活かした国際的な存在感の強化。制度改革要求:国際的な不公正さのバランスを求め、対話・訴訟・改革を要求。グローバルサウスは「従う側」から「共に作る側」へ、自国利益を軸に、対話・競合・改革を通じ、より良い国際的な政策実現を目指している。
成長の可能性と同時に、深い構造問題もある。1 格差・アクセス不足:貧困や所得格差、教育・医療へのアクセス不足。2 インフラ・エネルギー:インフラ不足やエネルギー供給の不安定さ。3 経済の脆弱性:債務問題、通貨不安、食料価格の変動など経済の脆弱性。4 気候変動・災害:気候変動の影響を受けやすく、災害や干ばつ・洪水のリスクが高い。5 政治・制度の課題:政治不安定、汚職、紛争などが発展を妨げる場合もある。課題は相互に連動する。成長機会:若い人口と旺盛な労働力、豊かな自然資源と再生可能エネルギーの潜在力、デジタル技術の普及による飛び越しの可能性、南南協力や国際連携による新たな投資・貿易の拡大。構造課題:歴史的背景や制度の脆弱性が課題を長期化、外部ショックに対する耐性が低い経済構造、国内資源の不足と能力の制約、多面的な課題への統合的な対応が不可欠。グローバルサウスの発展には、課題の克服と可能性の活用を両立させるバランスの取れた支援と協力が重要。
協力・依存・競争が入り混じる複雑な関係。貿易、投資、援助、技術移転を通じて深く結びついている。一方で、資源依存や債務依存、ルール形成で不利な立場に置かれることもある。近年は自立性を高め、より対等なパートナーシップを求める動きが強い。インフラ整備や脱炭素、保健、教育などで協力の余地が大きい。同時に、地政学的な競争の舞台として影響を受けやすい。協力の側面:貿易(モノやサービスの取引が経済成長と雇用を促進)、投資(資本の流入が産業発展やインフラ整備に貢献)、技術移転(知識や技術の移転が生産性向上やイノベーションを促進)、援助ODA(開発資金や人材支援が保健・教育などの社会課題を改善)、交渉・対話(国際フォーラムでの対話や連携が課題解決を後押し)。摩擦・依存の側面:資源依存(一次産品の輸出に偏り、価格変動の影響を受けやすい)、債務依存(借入依存が財政を圧迫し、政策の自由度を制約)、ルール形成で不利(国際ルールや基準の決定に十分に関与できない)。相互理解と尊重のもと、持続可能で包摂的な発展を実現する関係へ。
市場・資源・外交の面で無視できない存在。日本にとっての4つの柱:市場(成長市場としての投資・輸出機会の拡大)、資源(安定的な資源調達のための重要な相手)、協力(社会課題の解決に向けた協力と能力拡大)、人材交流(人々の往来や人材育成で互いに学ぶ機会)。経済面:食料・製造業を通じて多分野で関係が深く、サプライチェーン面でも重要な存在。外交面:グローバルサウスの動向は国際関係に大きく影響し、日本の外交でも重要なパートナー。グローバルサウスは、日本の未来を支える「パートナー」。互いの強みを生かし、対等な立場で共に成長できる関係を持続可能な発展につなげることが重要。
グローバルサウスを理解する3つの視点。1 単なる途上国の集まりではなく、多様な国々の総称である。2 世界経済・人口・資源・外交で存在感を高めている。3 大きな成長可能性と、格差・債務・気候変動などの課題が併存する。これからの国際社会を考えるうえで、グローバルサウスの視点は欠かせない。一国ごとの差異を丁寧に見ることが、理解の第一歩になる。世界の重心はより多極化している。